理科のこと何でも

理科のこと、環境ニュース

100平方センチメートルの面積にかかる大気圧による力は?

 以前、「1辺10センチの正方形にかかる大気圧による力の大きさはどれくらいか?」

と問題にしましたが、その解説を書きたいと思います。(遅くなってすみません)

 

 まず大気圧の大きさですが、1013hPa(ヘクトパスカル)と覚えていると思います。

ここでのh(ヘクト)は単位の接頭辞で、100を表しています。

すると、

1013hPa = 101300Pa

これは約100000Pa(10万パスカル)

となりますね。

 また、1Pa(パスカル)の定義ですが、1mの面積に1N(ニュートン)の力が加わる大きさの圧力となっています。

 

 さて、1kgの質量の物体にかかる重力の大きさ(つまり重さ)を考えてみます。

W = mg = 1kg × 9.8m/s= 9.8kg・m/s=9.8N ≒ 10N

となるので、

1kg重 ≒ 10N

ということは、

1N ≒ 0.1kg重

となります。

ですから、こう覚えておくといいと思います!

「1Paとは、1平方メートルに約100グラム分の重さがかかる圧力」

そして、大気圧1013hPaは、

「1平方メートルに約1万キログラム分の重さがかかる圧力」

となりますね!

 

 次は、1辺10cmの正方形の面積をm単位で求めてみましょう。

10cm=0.1m

ですから

(10cm)=(0.1m)

よって

100cm=0.01m

となります。

 

 さあ、最後の答えを出してみましょう!

1辺10センチの正方形にかかる大気圧による力の大きさは?

100000Pa × 0.01m =1000N

そして、この1000Nは、約100kg重となります! 

「1辺10センチの正方形にかかる大気圧による力の大きさは約100kg重!」

ちょっと信じられない重さだと感じませんか?

そして1平方メートルには、この100倍の10000kg重つまり10トン重の重さが加わっていることになるんですね!

結露で校舎内の床が広範囲に濡れる

 今朝の校舎内の床、特に廊下の床面は結露のため広範囲に濡れていました。

校舎内の、特にコンクリートにリノリウムを貼った「冷たい床」は全て濡れているような状況でした。

この現象はそれほど頻繁に発生する訳ではないんですが、ちょうど今頃発生しやすいと思います。

外気温が上がってきているんだけど、校舎全体はまだ温まっていなくて壁や床は冷たいくらいの時期ですね。

そんな時期に、雨が降るような蒸し暑い大気が校舎内に入ってくると、大気中の水蒸気が校舎内の冷たい所で結露します。

今日気付いたと思いますが、床だけでなく壁や金属製の手すり、窓枠なんかも濡れていたと思います。

湿度の高い大気が入ってきても、校舎の温度が低くなければ結露は起こらないんですね。

校舎のようなコンクリート製の建物は比熱が大きく、すぐに温まったりすぐに冷えたりしにくいんです。

ということで、急に外気温が上がってその大気の湿度が高い時にこの現象は発生する訳です。

でも、校舎の窓や入口が開いていない時は、気密性が割と高い校舎の中に大気は入っていきません。

登校時校舎の入り口が大きく解放されて、暑いからとたくさんの窓も開けられると一気にこの結露が起こる訳ですね。

 梅雨時期でなくても、台風が生ぬるい湿った空気を持ってくる時にも同じようなことが起こります。

台風の時は風が強いので、ドアや窓を閉め切っていても隙間から大気が入り込んできて結露が起きるんです。

今度同じようなことに遭遇したら、良く観察してみて下さい。

床が濡れているのは、外の雨が入り込んできたからではないんですね。

 

 さて今日このような状況で、校舎内で滑りそうになりませんでしたか?

上履きはスリップに対して強くはないと思うので、充分に気を付けて下さい!

スリップして転倒すると大ケガになることもありますから!

シンプルだけど良く考えられた実験(詳細)

 前回ざっと書いたこの実験について、原理も含めて記録しておきたいと思います。

フラスコ内の水をしばらくの間沸騰させると、水蒸気が発生しフラスコ内の空気は追い出され水蒸気だけになります。

火を止め、フラスコにピペット(俗称スポイト)を刺したゴム栓をはめ込むのですが、このゴム栓はこんな感じに作ってあります。

これをフラスコにこんな感じにセットします。

フラスコ内の温度が下がっていくと、内部の水蒸気は凝縮して液体の水になっていくので、フラスコ内部の気圧が下がっていくことになります。(フラスコ内の気体分子が減っていくから)

するとフラスコ内は100℃を下回っているにもかかわらず水が沸騰することになるんですが、これを減圧沸騰と呼んでいます。

フラスコ内の湯から泡が出ていて沸騰している様子が分かるでしょう?

フラスコの内部がいつも水面を押さえつけていた大気圧より低い圧力となるため、100℃を下回る温度でも沸騰できるようになるという訳です。

「高い山の山頂では気圧が低く、100℃にならずにお湯が沸騰する」と聞いたことがあると思いますが、これと同じ理由です。

 ちなみに圧力なべはこの逆で、なべに閉じ込めた水蒸気でなべの内部が高圧になるようにしてあるんです。

こうすると100℃を超えないと水が沸騰出来ないことになり、100℃を超える温度で調理が出来ることになる訳ですね。

 さて、減圧沸騰がしばらく続くと水蒸気が新たに生じるためフラスコ内部の圧力は上昇していきますよね。

すると沸騰が収まっていく訳ですが、フラスコと中の湯は外気にさらされ続けているので冷えていく一方です。

下の2つの写真では、水蒸気の凝縮がより多く起こってきてフラスコ内に水滴が沢山付着してきている状況が分かると思います。

さあ、生じた水蒸気が冷えてまたまた減圧沸騰が起こるより早くフラスコ全体が冷えるとどうなるでしょうか?

フラスコ内部の水蒸気が急激に凝縮すると、内部の圧力も急激に減少します。

ここでピペットのゴム球に着目して下さい!

ゴム球の内部は外の大気に通じているのでゴム球内部は大気圧によって外側に押され続けています。

ここでフラスコ内部つまりゴム球外部の圧力がすごく小さくなったらどうなるでしょう?

ゴム球は内側から押されている力で大きく膨らむことになりますよね?!

ごらんの通り、すごく見栄えのするはっきりとした結果になりました!

この実験はやってみた後で気付いたんですが、とても良く考えられているんですね!

まず、ピペットのゴム球の代わりに普通のゴム風船で実験する例があるんですが、風船は軟弱なのですぐ膨らんでしまって減圧沸騰がしっかりと見られないのではないかと思います。

そして、ピペットのゴム球に隙間なく接続できるのはガラスピペットの本体ですよね?

さらに、ピペット本体とゴム球の接続を確実にするために結束バンドを使っていることも良く考えたと思います!

さて、この実験の全体像と原理は見えたでしょうか?

 最後に問いを1つ書いておきたいと思います。

1辺10センチの正方形つまり100cmの面積にかかる大気圧による力はどれくらいだと思いますか?

答えは次回に!

シンプルだけど良く考えられた実験

 まずフラスコ内の水を沸騰させます。

火を止め、ピペットを付けたゴム栓をはめます。

放置して冷やすと、少し間をおいて減圧沸騰が始まります。

そして、さらにフラスコを冷やすと、最終的には・・・

さて、こうなる理由は・・・?

CO2排出削減の救世主的技術、二酸化炭素そのものを回収する方法!

 すでに大気中に排出されてしまった二酸化炭素CO2、あるいは、これからもまだ排出されるであろうCO2そのものを、どのように除去したらいいのでしょうか?

その最先端技術の紹介です。

 

自然界における二酸化炭素循環

 人類が化石燃料を使う前、地球上においてCO2は基本的に水や酸素と同様に、増えもせず減りもせず、うまく循環していたはずです。

地球化学的循環は数百万年オーダーの変動で、大気中のCO2は水に溶け、やがて炭酸カルシウム(CaCO3)となって固体になり、火山の爆発によりCO2が大気中に出て、また水に吸収されるという循環サイクルが完成します。

生物学的循環は数万年オーダーの変動で、植物は大気中のCO2と水から光合成によりデンプンやセルロースを生成。

この時に酸素が発生し、動物は酸素を吸ってCO2を吐いています。このように、CO2や酸素はバランスよく循環しています。

これが自然の摂理です。

さて、人為的CO2排出ですが、人類最初の化学反応は火を使った燃焼でした。

人類は、火を使って木や草を燃焼させエネルギーを獲得してきました。

木や草は炭素を骨格とした有機化合物からできていますので、燃やせばCO2が発生します。

この燃焼という化学反応は現在でも行われており、重要なエネルギー獲得手段になっているのは周知の通りです。

そして人類は、有機化合物からできている石炭・石油・天然ガスといった化石燃料を大量に燃やし、地球化学的循環や生物学的循環に比べて微々たる短期間、過去200年の間に、一方的に大量のCO2を排出してきました。

この人為的に排出されたCO2はリサイクルされておらず、CO2は大気中に溜まる一方です。

では、CO2はどのように削減すればいいのでしょうか。

 

二酸化炭素そのものを直接回収するには

 今注目を集めているのは、化石燃料をできるだけ使わない、あるいは再生エネルギーの活用などの間接的削減といったことではなく、CO2そのものを直接回収して削減する技術です!

この技術は、ダイレクトエアキャプチャー(DAC)と呼ばれますが、経済や社会活動に制約を与えることなく、CO2だけを削減することができる温室効果ガス削減の救世主的方法と言えるでしょう。

以下、いくつかの研究・開発例を紹介します。

 

<神戸学院大学・稲垣教授考案>

 アンモニア(NH3)など窒素原子を含む化合物であるアミン類がCO2を吸収することは周知の事実ですが、一緒に水を吸収してしまう欠点がありました。

しかし最近、メタキシリレンジアミンを用いると、この欠点を克服できることが見出されました。

吸収されたCO2を取り出すためには一般的には高温が必要ですが、この場合にはCO2吸収後、比較的低温の120℃でCO2を放出しますので、早期の実用化が望まれます。

 

<公益財団法人 地球環境産業技術研究機構考案>

 CO2を吸収する化学吸収液(2ーイソプロピルアミノエタノール水溶液にピペラジン誘導体やエタノールアミン誘導体を含むもの)や、固体吸収材(多孔質のシリカゲルにアミンを担持させたもの)を開発しています。

こうしたCO2を化学的に吸収する方法の開発は重要です。

 

<日本CCS調査株式会社考案>

 現在、日本CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)調査が、苫小牧沖の海底1000m以上の深さにある隙間の多い砂岩などからできている貯留層に、製油所から排出されるCO2を大気放出前に回収(活性アミンプロセス)して貯留する実証プラントを稼働させています。

かなり大掛かりな施設ですが、こちらも実用化が期待されます。

 

<JFEエンジニアリング株式会社考案>

 清掃工場から排出される排ガスからCO2を回収して利用するCCU(Carbon Capture and Utilization、二酸化炭素回収利用)プロセスの実証実験を開始すると発表しました。

このプラントのCO2吸収方法も、天然ガスプラント建設等で実績のあるアミン吸収法です。

CO2回収を清掃工場に適用すると、ごみに含まれるバイオマス分を合わせた「ネガティブカーボン(CO2回収量>排出量)」を達成することが可能になります。

 

<日揮株式会社考案>

 セラミック製のゼオライト膜を活用したCO2分離・回収技術の実証試験を米国テキサス州で開始しています。

日本ガイシと共同開発したゼオライト膜は1ナノメートル以下の微細な穴を多く持つのが特長で、ちょうどCO2を通す大きさなので、原油生産時に出てくるメタンなど他のガスから分離することができます。

抗菌シート・ワサオーロ

 職場でお弁当が出る日が1年に数回あるんですが、ある日のお弁当を開けてみると、何やら文字の書いてあるプラスチック製フィルムが蓋のように置いてありました。

この写真の背景はグレーですが、薄い透明なシートに白字で印刷がしてありました。

ワサオーロ?

「ーロ」の所は読み方があるのでしょうか?

この5文字で登録商標(TM)になっているようですから、何か意味が込められているんだと思います。

ネット上で調べてみたら、次のようなことが書いてありました。

天然素材を使った抗菌シートなんですね!

 

 三菱ケミカルフーズ株式会社は、食品向け抗菌・鮮度保持シート『ワサオーロ』を開発しました。

ワサオーロは、ワサビやカラシの辛味主成分であるアリルカラシ油(アリルイソチオシアネート)を主剤とした抗菌・鮮度保持シートです。

消費期限の短いお弁当やお持ち帰り食品の品質保持適しています。

菌やカビ・酵母の増殖を抑える特性があり、食品にシートをかぶせて蓋をすることで、速やかに抗菌効果を発揮します。

グレタさん痛烈批判「各国が掲げるのは架空の目標」

 スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさんは、世界のリーダーが参加するオンラインの会合で、各国の気候変動問題への取り組みについて「架空の目標」を掲げていると痛烈に批判しました。

 

「世界中のリーダーは気候の緊急事態といいますが、危機の中、すぐに行動する代わりに、彼らは漠然として不十分で架空の目標を掲げています」

 世界の政財界のリーダーが参加する「ダボス会議」の主催者がオンラインで開いた会合で、グレタさんは日本を含め各国が掲げる2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロとする目標について、「漠然として不十分で架空」だと指摘。

「夜中、家が燃えているのに、10年、20年、30年後に消防署に電話するようなものだ」と厳しく批判しました。

 さらに「国民の意識が低いために、リーダーたちはほとんど何からも逃げることが出来る」として、この問題に関心を持つよう広く呼びかけています。

カーボンリサイクルで二酸化炭素を燃料に?!

 「カーボンリサイクル」と聞けば、炭素の再利用だろうと考えます。

人間が利用しているエネルギーの大部分は、石油などの化石燃料を燃やすことで得ています。

「カーボンリサイクル」とは、その結果で生じる二酸化炭素を再利用する技術ですね。

そのリサイクルのうち、「プラスチックのような炭素化合物の原料に二酸化炭素を使う」といったようなことは可能なんだろうなと思います。

ところが、「エネルギーを放出して出来た二酸化炭素を燃料に利用する」と聞けば、ちょっと信じられない驚きを感じます!

でも良く考えてみれば、植物にはそれが出来ているんですよね!

光合成による炭酸同化作用です。

二酸化炭素と水から、酸素と炭水化物を生産している訳ですが、光エネルギーを得ながらこの反応を起こしています。

この結果、生じた炭水化物は光からのエネルギーを蓄えたもの、つまり燃料として利用できるものとして出来上がっている訳です!

人工的にこの光合成を真似することが未だに出来ない訳ですが、このような反応が他にもあるのではないだろうか・・・

 

 地球温暖化の原因になっているといわれるCO2の排出量を減らすことは、今やグローバルな課題になっています。

エネルギー分野においては、CO2排出量の少ないエネルギー資源への転換をはかること、省エネルギーに努めることなどが大切です。

加えて、CO2を分離・回収して地中に貯留する「CCS」、分離・回収したCO2を利用する「CCU」も、大気中のCO2を削減するための重要な手法として研究が進められています。

このようなCO2の利用をさらに促進するべく、研究開発をイノベーションにより進めようという取り組みが、「カーボンリサイクル」です。

 CCUでこれまで一般的だったのは、「EOR(原油増進回収技術)」と呼ばれる手法への利用です。

たとえば、油田にある原油をできるだけ回収するためには、水などを、圧力をかけて注入し、岩石の小さな穴などに溜まっている原油を押し流します。この時、水の代わりに炭酸ガスを圧入するのが、CO2を使ったEORです。

もうひとつ、現在一般的なCO2の利用先としては、ドライアイスや溶接などに直接利用する方法があります。

しかし、こうした方法だけでは、利用されるCO2の量は限られてしまいます。

そこで、CO2を“資源”ととらえ、素材や燃料に再利用することで大気中へのCO2排出を抑制する、そのために世界の産学官連携のもとで研究開発をおこないイノベーションを進めていこうとする取り組みが、経済産業省が提唱する「カーボンリサイクル」です。

 

 CO2の利用先としては、①化学品、②燃料、③鉱物、④その他が想定されています。

①化学品では、具体的には、ウレタンや、プラスチックの一種でCDなどにも使われるポリカーボネートといった「含酸素化合物」が考えられています。

また、バイオマス由来の化学品や、汎用的な物質であるポリプロピレンやポリエチレンなどの樹脂も利用先となりえます。

②燃料では、光合成をおこなう小さな生き物「微細藻類」を使ったバイオ燃料や、バイオマス由来のバイオ燃料がCO2の利用先として考えられています。

③鉱物では、「コンクリート製品」や「コンクリート構造物」が考えられています。

具体的には、コンクリート製品などを製造する際に、その内部にCO2を吸収させるものなどです。

④その他として、バイオマス燃料とCCSを組み合わせる「BECCS」、海の海藻や海草がCO2を取り入れることで海域にCO2が貯留する「ブルーカーボン」などが考えられています。

これらは総称して「ネガティブ・エミッション」と呼ばれます。

新型コロナウィルス等の殺菌用LEDを開発、量産へ

 発光ダイオ―ド(LED)製造大手の日亜化学工業は、LEDで紫外線を照射して新型コロナウイルスを不活化して殺菌にも利用できる装置を開発したと発表した。

 

 空気清浄機やエアコンなど家電の内部に取り付けたり、紙類などの消毒に活用できたりする可能性がある。

ただし、人体への影響を考慮すると、肌に直接照射することは困難という。

二酸化炭素は「無毒」と教わりますが、実は怖い中毒も!

 昨日12月22日午前、名古屋市のホテル地下駐車場で、充満した煙を吸うなどして、作業員と周辺の方11人が病院に搬送され、このうち50代の男性作業員が死亡しました。

二酸化炭素を発生させる消火設備が作動し、煙が充満したとみられています。

この消火設備は二酸化炭素を注入することで酸素の濃度を16%以下にし火を消す仕組みです。

 二酸化炭素の消火設備は、スプリンクラーで水をかけられない、主にコンピューターなど電気設備のある場所で使われていて、火災報知機と連動して自動で動くものもあるといいます。

一方、二酸化炭素は人体に悪影響を及ぼす可能性があるため、最近は窒素などで代用されることが多いといいます。

 

 この事件では、不幸なことに犠牲になられた方が出てしまいました。

そして、この報道中にもある「酸欠とは別の二酸化炭素の有害性」について、過去の事故を思い出したので記しておこうと思います。

 

 1997年7月12日夜、青森県八甲田山のくぼ地で、訓練中の自衛隊員3人が死亡する事故が起きた。

死因は、火山性の二酸化炭素ガスと見られている。

コーラやビールの気泡やドライアイスなど、身近な存在でもある二酸化炭素。

実は、人間や動物をあっという間に倒す怖い一面を持っている。

しかし、毒性の仕組みはまだ良く分かっていない。

 

 どんな条件の時、二酸化炭素の中毒は起きるのか。

事故の翌日、現地のガス成分を調べた報告書によると、くぼ地での二酸化炭素濃度は15~20%だった。

大気中の二酸化炭素濃度は約0.03%なので、このくぼ地では、通常の約500倍もの濃度があったことになる。

 二酸化炭素が原因だとすると、自衛隊員らが倒れたのは酸素が欠乏したせいか?

れとも高濃度の二酸化炭素そのもののせいだろうか?

 命にかかわる酸素欠乏は、空気中の酸素濃度が12%を下回った時と言われている。

二酸化炭素濃度が20%の時の酸素濃度は16.7%で、致命的な酸欠状態とは言えない。

一方、一般的に二酸化炭素を30分間吸い続けても後遺症がない「脱出限界濃度」は5%とされている。

10%の二酸化炭素を吸うと、耳鳴りやふるえが起き、1分間で意識を失う。

30%になると、即座に意識不明の状態になる。

酸素20%、二酸化炭素80%の気体を犬に吸わせたら、1分で呼吸が止まり、数分で死亡したという報告があるという。

この実験は、大気と同じ濃度の酸素(大気の酸素濃度は約20%)があっても、二酸化炭素が一定量以上あれば、中毒を起こすことを示している。

 1986年8月、西アフリカ・カメルーンでは、湖から火山性の二酸化炭素ガスが大量に噴出、湖の近くで、村人約1200人のほぼ全員が死亡する事故が起きている。

 火山性ガス以外では、車でドライアイス運搬中にドライアイスが気化して中毒を起こした例や、二酸化炭素消火装置による例などがある。

ドライアイス2キログラムは、室温だと1時間で約350グラムが気化して約200リットルの二酸化炭素になる。

車内空間が約2立方メートルの軽自動車の場合、濃度は約10%になり、密室状態にしておくと中毒を起こす条件になる。

ドライアイス販売会社は「車で持ち帰るお客さんには、窓を開けて運転するよう呼びかけています」と言う。

 二酸化炭素ガスにすばやく意識を奪う作用があることは、18世紀にはすでに分かっていたが、なぜそのような効果があるのか、仕組みはいまだに解明されていない。

大阪大学医学部麻酔学の吉矢生人教授は「二酸化炭素ガス以外にも、笑気ガスやエーテルなど麻酔効果を持つ気体はいろいろありますが、肺から吸入して脳に作用するメカニズムは、どれもわかっていません」という。

 

<呼吸や飲み物、また人工呼吸での二酸化炭素の心配は?> 

 人間は、呼吸で酸素を取り込み、二酸化炭素を放出している。

呼気中に含まれる二酸化炭素は約4%なので、口移しで空気を送り込む人工呼吸では、二酸化炭素中毒を起こす心配はない。

 炭酸飲料やビールの泡に含まれる二酸化炭素は、肺でなく胃に入る。

胃酸で気体になり、ゲップとして排出されるので、こちらも中毒の心配はない。

 

(注)大学入試「化学」の中での知識では

二酸化炭素は常温では気体で、その性質は、

「無色」「無臭」「無毒」「水に少し溶ける」です。

アンモニア合成の発明者ハーバー 「栄光と影」(2)

 ベルギー西部のイーペルは、第一次世界大戦中の1915年4月、史上初めて本格的な毒ガス戦の舞台の町となりました。

催涙ガス弾などはそれまでにも使われていましたが、ドイツ軍はイーペルの草原で4月22日、致死性の高い大量殺傷用ガスを初めて用いたのです。

人の粘膜を破壊し、呼吸困難などに陥れて殺害する塩素ガスです。

これをきっかけに、ドイツ軍に限らず英仏など連合国側もたがが外れたように化学兵器を使い始めました。

双方はホスゲンなど新種の兵器を次々に投入。

第一次大戦での毒ガスによる死者は約10万人に上り、市民も含む100万人以上が負傷したといわれています。

 戦争と科学の発展は切っても切れないのですが、その陰で戦闘員ではない大量の一般市民が命を落としてきました。

こうした兵器を開発した人は、どんな思いで生涯を過ごしたのでしょうか。

 

「平時は人類のため、戦時は祖国のため」

 この塩素ガスを兵器として開発したのが、「化学兵器の父」と呼ばれるドイツの化学者フリッツ・ハーバー博士(1868~1934)だったのです。

「科学というものは、平時は人類のため。戦時は祖国のため」

それが愛国者だった彼のモットーでした。

開発に成功した時、ドイツ国内ではほとんど反対の声もなく、彼はまさに英雄でした。

彼はドイツのエリート層、特にドイツの皇帝に認められたい一心だったのです。

第一次大戦が終わった年の1918年には、過去に手掛けたアンモニア合成法の業績が認められてノーベル化学賞まで受賞しています。

もっともこの受賞には戦時中の敵国だった英国やフランスから激しい非難の声が上がりました。

ですが、ハーバーの名声はノーベル賞を機にさらに高まっていきました。

 

今も続く追悼式

 イーペルは毒ガス戦だけでなく激しい砲撃戦の舞台ともなりました。

今、この町には当時ドイツと戦った英国側の戦没兵の名前が刻まれた門「メニン・ゲート」があります。

大英帝国戦没者墓地委員会が1927年に建立したもので、54896人の名が残っています。

英国をはじめとした連合軍兵士は、この門を起点に戦場へ向かいました。

門にはオーストラリアやインド、カナダなどからの出征兵士の名前も多く刻まれています。

祖先の追悼のため、今も世界中から多くの人々が訪れる場所なのです。

 イーペルでは毎晩、戦没者の追悼演奏が行われています。

式典を主催する民間団体「ラストポスト協会」はトランペット演奏をする楽団を含め、20人以上のスタッフ全員がボランティア。

各自、仕事が終わってから門に駆け付け、15分ほどの式典を行います。

この団体幹部のベノワ・モトリーさんによると、

「1928年以降、ナチス・ドイツによる占領時代を除いて毎日続けています。追悼の思いを一日たりとも忘れないためです」

 2020年には新型コロナウイルスの影響でこのイベントの続行が危ぶまれました。

ですが欧州メディアによると、今も見物客の人数を制限し、互いの距離を取りながら、追悼演奏は続けられているということです。

 

「英雄」を待ち受けていた運命

 さて、ドイツの英雄となったハーバーはその後どうなったのか。

1933年にヒトラー率いるナチスが政権を握ると、彼の人生は暗転していく。

彼はユダヤ人だったのだ。

ナチスのユダヤ人迫害政策の影響で、徐々にハーバーは「追われる身」となる。

ドイツを愛し、ユダヤ教からキリスト教に改宗までしたハーバー。

だが彼は結局そのドイツから裏切られ、1933年に研究機関を去ることになる。

フランスに住んでいた息子を頼り、まずハーバーはパリに逃げた。

さらに英国などを転々とした後、1934年1月にスイス・バーゼルで病死した。

ライン川が流れるこの町の目と鼻の先には、彼が愛し抜いた祖国ドイツがあった。

 世界はその後も化学兵器を使い続けた。

第二次大戦、ベトナム戦争、イラクのクルド人が虐殺されたハラブジャ事件、化学テロである地下鉄サリン事件、そしてシリア内戦。

第一次大戦から100年以上たった今も、それは現在進行形で人類の脅威であり続けている。

シリアではアサド政権による猛毒神経ガス・サリンなどを使った化学兵器攻撃が何度も疑われている。

だが政権側はその度に使用を否定し、国際調査も進まない。

 ハーバーは毒ガスの使用について、同僚にこう説明していたという。

「むしろ使用によって戦争を早く終結させ、多くの人の命を救える」

この論理は、のちに第二次大戦で広島、長崎への原爆投下を正当化した米国側の主張にそっくりだ。

しかし大量破壊兵器の使用はこうして21世紀の今も続き、多くの人が命を失い続けているのが現実でもある。

 祖国ドイツのため、化学兵器開発を誇りに思っていたハーバー。

だが彼は死の直前、息子にこんな遺言を残している。

「クララと一緒の墓に埋めてほしい」

毒ガスを開発した男が人生の最後に思い出したのは、その毒ガスの使用に抵抗した最初の妻クララだったのだ。

二人は今、スイス・バーゼルの同じ墓に眠っている。

アンモニア合成の発明者ハーバー 「栄光と影」(1)

 今日、ドイツの化学者フリッツ・ハーバーについての記事が目に留まりました。

高校の化学の教科書に必ず登場するハーバーですが、自分の知らなかった一面を初めて知り、大きなショックを受けました。

ノーベル賞も受賞した彼の栄光と影について記しておこうと思います。 

 

 化学の教科書の、「化学平衡」「非金属元素窒素」の項に必ず登場するのが、アンモニアの工業的製法「ハーバー・ボッシュ法」です。

このアンモニアの合成法は、ドイツのフリッツ・ハーバーが発明し、カール・ボッシュが触媒を改良して工業化に成功させました。(1906年)

当時、このアンモニア合成法は、「水と石炭と空気からパンを作る方法」とも言われた大発明でした。

このように言われた理由ですが、パンの原料である小麦を始めとして農作物を育てるには窒素分を含む肥料の十分な供給が不可欠です。

その窒素を供給する化学肥料を生成するのにハーバー・ボッシュ法が使えるため、この方法の発見によって農作物の収穫量は飛躍的に増加したのです。

化学肥料の誕生以前は、農作物の量が人口増加に追いつかず、人類は常に貧困と飢餓に悩まされていました。

しかしハーバー・ボッシュ法による窒素の化学肥料の誕生や過リン酸石灰によるリンの化学肥料の誕生により、ヨーロッパやアメリカ大陸では、人口爆発にも耐えうる生産量を確保することが可能となったのです。

ハーバーは本法の業績により、1918年にノーベル化学賞を受賞、またボッシュは本法を応用した高圧化学反応の研究により、1931年にノーベル化学賞を受賞しています。

 

 この方法は同時に、平時には肥料を、戦時には火薬を空気から作るとも形容され、爆薬の原料となる硝酸の大量生産を可能にしたことから、その後の戦争が長引く要因をも作りました。

その例ですが、ドイツ帝国は、第一次世界大戦で使用した火薬の原料の窒素化合物の全てを国内でハーバー・ボッシュ法を元にして調達できたのです。

 

 一方、本法によるアンモニア合成法の開発以降、生物体としてのヒトのバイオマスを、従来よりもはるかに多い量で保障するだけの窒素化合物が、世界中の農地生態系に供給され、世界の人口は急速に増加しました。

現在では地球の生態系において最大の窒素固定源となっています。

さらに、農地生態系から直接間接双方の様々な形で、他の生態系に窒素化合物が大量に流出しており、地球全体の生態系への窒素化合物の過剰供給をも引き起こしています。

この現象は、地球規模の環境破壊の一端を成しているのではないかとする懸念も生じていますが、これについてはまだ良く分かっていません。 

国際宇宙ステーション「きぼう」を見よう!

 今週前半は太平洋側を中心に晴れる日が多い予報です。

空気が乾燥すると、空気が澄んで、星や惑星が一層きらめいて見えます。

星々と共に野口聡一さんも乗る国際宇宙ステーション「きぼう」も見られそうです!

見られる日にちや時間は・・・

 
 国際宇宙ステーション・ISSは、木星より強い輝きで見えることもあり、速度も飛行機より少し遅いくらいで、肉眼で捉えやすいとのことです。

ISS自体が光っているのではなく、太陽の光を受けて光って見えるため、太陽が当たる時間や軌道などと合わせて、観測に最適な日があるようです。

 とりあえず、今日と明日ですが・・・

<9日(水)午後5時52分頃の目視予想>

 西日本や東日本(四国・中国~北陸や関東)では、9日(水)の午後5時50分過ぎから午後6時前までで、高度が高く、かなり見えやすくなりそうです。

東日本はやや雲が多いものの、西日本はよく晴れるので、観測に最適となりそうです。

関東は、昨日8日の方が観測しやすかったようですね・・・

 

12/9(水)17:50ごろから

12/10(木)17:05ごろから

 この他にも観測しやすい日は、一年を通して地域ごとにあり、それぞれ異なっています。

今日見えなくても、観測のチャンスはまだありますよ!

JAXAのホームページ、きぼうをみよう(http://kibo.tksc.jaxa.jp/)から調べてみてください。

「きぼう」が見えますように!

はやぶさ2 生命の起源有機物見つかるか?

Q.なぜ小惑星を探査するのか?

A.小惑星を探査するのは、それによって「太陽系の起源と進化」と「生命の材料(有機物)の進化」という根本的ななぞの理解が進む と期待されているからです。

「はやぶさ2」では、太陽系形成初期の情報を保持しており、しかも有機物と水の存在しているC型小惑星(リュウグウ)から試料を採って帰ります。

それは、人間がこれまで手にしたなかで最も始原的なものであり、地球の汚染もありません。

したがって、試料を分析し、その結果を試料の地質情報(小惑星の構造・物質分布・熱の様子などの情報)ととも に読み解くことによって、以下のような研究を大きく進めることができると考えられています。

(1)生命の材料(有機物)は地球で進化したのか、小惑星などの宇宙から輸送されてきたのか?

(2)小惑星では有機物はどのように進化したのか?

(3)地球の海水はどこから供給されたのか?

(4)太陽系の材料はどのようなもので、どのように形成され、どのような進化を遂げたのか?

 

Q.なぜ小惑星には太陽系ができたころの痕跡が残っていると考えられるのか?

A.地球の岩石や砂を調べても太陽系のできたときの姿はわかりません。

地球をつくった元の物質は地球が誕生する過程でどろどろに溶けてから固まっているため、そのころの 情報は失われているからです。

一方、リュウグウのような小惑星は熱的な影響は小さく、昔の状態をよく保持していると考えられます。

 

Q.なぜリュウグウがターゲットとして選ばれたのか?

A.主に以下の3つの理由からです。

(1)C型小惑星(有機物や水を多く含む、始原的な天体)のひとつであるからです。

(2)微惑星の衝突破壊で生成された破片天体と推定されているので、微惑星を作った物質が 何なのかを直接に確かめることができます。

(3)軌道はほぼ地球と火星の間に収まっているので、地球から比較的短い距離で到達できます。(C型小惑星の多くは火星と木星の間にあります)

 

太陽系と生命の起源と進化のなぞを明かす試料の分析

 太陽系と生命の起源と進化のなぞの解明という壮大な目的のためには、リュウグウより採ってきた試料の分析が決定的に重要です。

まず重要なのは、リュウグウで採取した試料をそのままの状態で物質や熱の汚染なしに地球まで持ち帰ることです。

試料を格納するサンプルキャッチャーは、3カ所から採取された試料が混ざることなく、3部屋で個別に保管される構造を持っています。

サンプルコンテナは、サンプルキャッチャーを完璧に密封して保管し、地球に帰還す る構造を持っています。

地球に突入すると空気との摩擦で表面は最高で3000℃になりますが、内部は最高でも50℃以下に保たれます。

このようにして地球へ持ち帰った試料の初期分析は6つの国際チームによって行われます。

このうち3チームのリーダーが九州大学の先生方です。

東北大学の中村教授も以前は九州大学の所属でした。

「はやぶさ2」の試料分析では九州大学が世界をリードしていると言えます。

今日深夜から明日未明に獅子座流星群

 今日11月17日、しし座流星群の活動が極大となります。

予測極大時刻は17日20時ごろですが、このときには放射点が地平線の下なので、しし座が昇ってくる18日未明から明け方ごろが一番の見ごろとなるそうです。

月明かりの影響はないようですが、活動は低調とみられるので、空の条件の良いところでも1時間あたり5~10個程度とのこと。

観測は防寒の準備を万全にして。

21日の未明に別の出現ピークが見られるという可能性の予報もあるので少し気にかけておきたいですね。

 これまでも大出現で有名なしし座流星群ですが、

テンペル・タットル彗星の通り道を毎年この時期に地球が通過し、そこに残されていた塵が地球の大気に飛び込んで上空100km前後で発光して見える現象だそうです。

 

しし座流星群の特徴は?

(1)スピードが速い

 しし座流星群の流れ星の速度は秒速71kmに達し、国際天文学連合がまとめた64の主要な流星群の中で、最もスピードが速い流星群とされています。

よく、流れ星が流れている間に3回願い事をすると叶うと言われていますが、願い事を唱えるのが一番難しい流星群とも言えそうです。

2)明るい流れ星が多い

 しし座流星群は全体的に明るい流れ星の割合が高く、火球と呼ばれるひときわ明るい流れ星も多く観測されます。

(3)流星痕が観測できることも

 明るい流れ星が流れた後、その流星の軌跡上で雲のようなものが淡く輝く「流星痕」を観測できることがあります。

しし座流星群は明るい流れ星が多いため、流星が流れた「あと(後・跡・痕)」にも注目して観測するのも良さそうです。

地球衝突!? 小惑星への対策は?

「地球衝突!? 小惑星への対策は」

 JAXA 宇宙科学研究所 准教授 吉川 真

 

 天体の地球衝突が現実に起こっています。

最近では、4年前の2013年に、ロシアのチェリャビンスク州に落ちた隕石があります。

このときには、100キロメートル以上にわたって、建物の壁や窓ガラスが壊れ、1500人以上の人がけがをしました。

落ちてきた隕石は20メートル程度の大きさと言われており、発生した衝撃波によって被害が広範囲に及びました。

さらに100年ほど前の1908年には、シベリアでツングースカ大爆発と呼ばれる出来事がありました。

このときには、森林が約2000平方キロメートルにわたって被害を受けていますが、その原因は大きさが60メートルくらいの天体の衝突だと言われています。

地球の歴史、あるいは生命の歴史を見ると、今から6600万年くらい前に、恐竜をはじめとして多くの生物種が絶滅しましたが、その原因として最も注目されているものが天体の衝突です。

大きさが10キロメートルくらいの天体が、メキシコのユカタン半島付近に衝突して、その後、地球の環境が変化しました。

その変化した環境に適応できなかった生物が滅んだというわけです。

 大きさが数十メートルくらいの天体でも地球に衝突すれば地域的には大きな被害を受けますし、大きな天体ですと人類絶滅につながるかもしれない・・・ということが1990年代から広く認識されるようになり、天体の地球衝突という問題に対応する活動が始まりました。

これがスペースガードあるいはプラネタリー・ディフェンスと呼ばれる活動です。

スペースガードの活動で重要なことは、地球に衝突する可能性がある天体を発見して、その軌道を正確に把握することです。

天体の軌道が正確に分かると、計算によってその天体が地球に衝突するかどうか、そしてもし衝突する場合には、いつどこに衝突するかが完全に予測できます。

これは、何十年も先の日食や月食が正確に予報できるのと同じです。

つまり、天体衝突による災害というものは、その天体さえ発見して軌道を推定しておけば、完全に予測可能な災害なのです。

地球に接近しうる天体のことをNEO(ニア・アース・オブジェクト)と言います。

具体的には小惑星とすい星(ほうき星)がありますが、1990年代から多くのNEOが発見されるようになりました。


小惑星は、現在すでに73万個以上も発見されています。

その中の、NEO地球に接近しうる小惑星は、約1万6000個が発見されています。

これら発見されている小惑星につきましては、軌道が計算されており、少なくても今後100年くらいは地球に衝突する恐れはないことが分かっています。

しかし、まだまだ発見されていないNEOがたくさんあるのです。

こちらの図には、地球接近小惑星の発見個数の推移が示されています。

このように年を経るごとに発見されている地球接近小惑星の数が増えていくことが分かります。

ただし、大きさが1500メートル以上のものについては、最近はあまり増加していないことも分かります。

これは、この大きさの地球接近小惑星がほぼ発見し尽くされてきたことを意味しています。

ところが、それより小さなものはどんどん数が増えていますから、まだ未発見のものが多いわけです。

まずは、未発見の天体を見つけて軌道を推定することが重要です。

 

 では、もし地球に衝突する天体が発見されたらどうしたらよいでしょうか? 

2017年5月に、スペースガードについて議論をする国際会議が東京で開催されました。

この会議では、大きさが300メートルくらいの天体が東京に衝突するという設定で議論が行われました。

もしこのような衝突が起こると東京は壊滅状態になりますから、是が非でも衝突を回避する必要があります。

小惑星のような天体が地球に衝突するのを回避するために、いろいろな方法が提案されています。

その中で、現時点で技術的に可能な方法は、宇宙船のような人工物体を小惑星に衝突させてその軌道をずらす方法です。

映画によくあるように、地球に衝突してくる天体を爆破するのは意味がありません。

仮に天体を爆破できたとしても、破片が地球に降ってくるので被害を回避することはできないからです。

天体を爆破するようなことはせずに、その軌道を変えることが適切な衝突回避策になります。

しかし、宇宙船を衝突させたとしても小惑星の軌道の変化はごくわずかです。

したがって、なるべく早めに対処する必要があります。たとえば、ある小惑星が20年後に地球に衝突するとして、今のうちに宇宙船をその小惑星に衝突させて軌道を少しずらしておきます。

すると、20年後にはそのずれが大きくなって地球に衝突せずにすむというわけです。

すでに米国では彗星に探査機を衝突させるミッションを行っていますし、日本も「はやぶさ」探査機を小惑星に送ることに成功しています。

ですから、技術的には十分可能です。

ただし、この方法は、天体衝突までに十分な時間があることに加えて、相手の天体があまり大きくない場合でしか有効ではありません。

地球に衝突してくる天体の大きさが数百メートルくらいまででしたらよいのですが、それより大きいと、宇宙船を衝突させたくらいでは小惑星の軌道は変化しないのです。

衝突してくる天体が大きい場合には、より大きな力で小惑星の軌道を変える必要があります。

これは、エネルギー的に考えると、核エネルギーに匹敵します。

実際、小惑星の軌道を変えるために核爆弾が使えるかどうかの研究もなされています。

本当に地球衝突がある場合には、いろいろな手段を検討することになるかと思いますが、現時点では核の使用については慎重であるべきだと思います。

天体の地球衝突というと衝突回避が注目されがちですが、天体衝突という情報が流れたときに人々がパニックに陥らないかとか、経済的なダメージはどうなるのか、さらには衝突回避を誰が行うのか、そして仮に衝突回避に失敗したら誰が責任を負うのかなど、複雑で難しい問題がいろいろとあります。

大きな災害を伴う天体の地球衝突は、めったに起こることではありません。

しかし杞憂ではなく、いつの日か必ず起こることです。

いたずらに恐怖心をあおることなく、冷静で着実な対応を進めていくことが重要です。

天体の地球衝突は、天体を発見しその軌道を把握しさえすれば、完全に予測可能な自然災害なのです。

マンホール内での中毒事故

 昨夜、茨城県土浦市で下水道の汚泥を取り除く作業にあたっていた作業員の方2人が相次いでマンホールの底に転落し、亡くなりました。

これまでの調べによると、作業員Aさんは下水道内での作業を終えて地上に出ようとした際にマンホールの底に転落し、助けに向かおうとした作業員Bさんも転落したということです。

消防によると、現場からは猛毒の硫化水素ガスなどが検出されたということです。

 

 この2人の方は、作業を終えてさあ帰ろうとしていた矢先だったと思われ、本当に痛ましい事故だと思います。

マンホール内での硫化水素発生の事故は時々耳にしますし、また自分も、下水付近で硫化水素の臭いに気づくことが時々あるんです。

下水で硫化水素が発生するのはなぜなのでしょうか?

原因を調べてみました。

下の図は、下水管が腐食される時の概念図です。

下水中の硫酸イオンSO2-は、ごく普通に存在するようです。

でも、この硫酸イオンが炭素Cと水HOに接触し、細菌(硫酸塩還元細菌)の働きで硫化水素HSに還元されてしまうというのは、本当に驚きですね!

安定な硫酸イオンに変化していくのが、通常の環境での反応だと思います。

酸素の少ない環境では、嫌気性のこの細菌がこのような反応を起こさせるんですね!

そして、発生した硫化水素は、酸素の多い環境では、今度は好気性の硫黄酸化細菌により一気に硫酸HSOに酸化されるということのようです。

ここで生じた硫酸は、下水管やマンホールのコンクリートや鉄筋を腐食する害を生み出すんですね。

換気の悪い下水周辺、または汚泥や汚水が溜まっているような場所では、「猛毒の硫化水素ガスが普通に発生している可能性がある」ということは頭に入れておいた方がいいと思います。

神奈川県の異臭騒ぎのこと

 ここ数日神奈川県内で異臭騒ぎが相次いでいます。

今日のニュースで知ったんですが、この異臭は6月から続いているそうです。

「ガスのような臭いがする」「ゴムが焼けた臭いがする」といった通報が寄せられているそうです。

この事件について、周辺の大気を採取し分析を進めていた横浜市が13日に会見を開きました。

「ガソリン等の燃料の蒸発ガスに含まれるイソペンタンやペンタン、ブタンといったものが、通常の大気中に比べて高い濃度で検出された」

「また、化学製品の原材料や物を燃焼した際に発生するエチレンやアセチレンも検出された」

ということです。

異臭の発生源は現時点では不明で、直ちに健康に影響を及ぼすことはないということも発表されました。

 

さて、検出された物質は、すべて高校教科書でも出てくる比較的炭素数の少ない炭化水素です。

 ①ペンタン C12(CHCHCHCHCH

 ②イソペンタンC12(CHCHCH(CH)

 ③ブタンC10(CHCHCHCH

 ④エチレンC(CH=CH

 ⑤アセチレンC(CHΞCH)

②は発性の高いベンジンのような液体で、気化した気体はベンジンやガソリンのような臭いがします。

また、④は気体で、かすかに甘い臭いがしますが、熟れた果物もこの気体を発しているので臭いを想像できるのではないでしょうか?

残りの③、⑤は無臭の気体です。

アセチレンには臭いがあると経験している人がいるかもしれませんが、カルシウムカーバイドと水の反応で生じたアセチレンガスは臭いのある不純物を含んでいるのです。

純粋なアセチレンは無臭です。

ということで、「ゴムが焼けた臭い」に関連するような物質はなさそうですよね?

異臭の原因がはっきりと究明されて欲しいと思っています。

火星大接近

 明日10月6日夜、火星が地球に大接近します!

夜11時18分に最接近とのことです。

夜空を見上げた時、火星の位置関係は以下のようになるそうです。

色や明るさなど、どんな感じに見えるのでしょうか?

台風10号が予想よりも勢力を弱めた理由

 未曽有の強さと予測されていた台風10号が去っていきました。

亡くなられた方、怪我をされた方、行方不明の方は100名以上いらっしゃるようです。

ただ、不幸中救われたことがあったと分析されていました。

それは、台風が予想のようには成長しなかったことだというのです。

 

 台風10号が当初の予想よりも勢力を弱めた理由について、専門家は、直近に同じようなコースをたどった台風9号の影響で海面水温が下がり、「動力源」となる水蒸気を十分に取り込めなかったためとみている。

 10号は6日午前に奄美地方へ接近しながら急速に衰退。中心気圧が945hPaに上がり、特別警報の発表は見送られた。

 勢力が弱まった主な要因として、海面水温の低下が挙げられる。

気象庁によると、8月の九州近海の海面水温は熱帯並みに高かったが、9号が通過した9月2日頃を境に低下したとみている。

海上を台風が進むと、海面近くの温かい水と深い場所の冷たい水が強風でかき混ぜられたり、雨雲に日光が遮られたりして水温が下がる。

勢力が少し弱まったタイミングで水温の低い海域を通ったことで、衰退が加速したのではないかと考えられる。

水温低下に加え、上空の気流が影響し、台風の構造が崩れやすくなったことも一因になった可能性がある。