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二酸化炭素は「無毒」と教わりますが、実は怖い中毒も!

 昨日12月22日午前、名古屋市のホテル地下駐車場で、充満した煙を吸うなどして、作業員と周辺の方11人が病院に搬送され、このうち50代の男性作業員が死亡しました。

二酸化炭素を発生させる消火設備が作動し、煙が充満したとみられています。

この消火設備は二酸化炭素を注入することで酸素の濃度を16%以下にし火を消す仕組みです。

 二酸化炭素の消火設備は、スプリンクラーで水をかけられない、主にコンピューターなど電気設備のある場所で使われていて、火災報知機と連動して自動で動くものもあるといいます。

一方、二酸化炭素は人体に悪影響を及ぼす可能性があるため、最近は窒素などで代用されることが多いといいます。

 

 この事件では、不幸なことに犠牲になられた方が出てしまいました。

そして、この報道中にもある「酸欠とは別の二酸化炭素の有害性」について、過去の事故を思い出したので記しておこうと思います。

 

 1997年7月12日夜、青森県八甲田山のくぼ地で、訓練中の自衛隊員3人が死亡する事故が起きた。

死因は、火山性の二酸化炭素ガスと見られている。

コーラやビールの気泡やドライアイスなど、身近な存在でもある二酸化炭素。

実は、人間や動物をあっという間に倒す怖い一面を持っている。

しかし、毒性の仕組みはまだ良く分かっていない。

 

 どんな条件の時、二酸化炭素の中毒は起きるのか。

事故の翌日、現地のガス成分を調べた報告書によると、くぼ地での二酸化炭素濃度は15~20%だった。

大気中の二酸化炭素濃度は約0.03%なので、このくぼ地では、通常の約500倍もの濃度があったことになる。

 二酸化炭素が原因だとすると、自衛隊員らが倒れたのは酸素が欠乏したせいか?

れとも高濃度の二酸化炭素そのもののせいだろうか?

 命にかかわる酸素欠乏は、空気中の酸素濃度が12%を下回った時と言われている。

二酸化炭素濃度が20%の時の酸素濃度は16.7%で、致命的な酸欠状態とは言えない。

一方、一般的に二酸化炭素を30分間吸い続けても後遺症がない「脱出限界濃度」は5%とされている。

10%の二酸化炭素を吸うと、耳鳴りやふるえが起き、1分間で意識を失う。

30%になると、即座に意識不明の状態になる。

酸素20%、二酸化炭素80%の気体を犬に吸わせたら、1分で呼吸が止まり、数分で死亡したという報告があるという。

この実験は、大気と同じ濃度の酸素(大気の酸素濃度は約20%)があっても、二酸化炭素が一定量以上あれば、中毒を起こすことを示している。

 1986年8月、西アフリカ・カメルーンでは、湖から火山性の二酸化炭素ガスが大量に噴出、湖の近くで、村人約1200人のほぼ全員が死亡する事故が起きている。

 火山性ガス以外では、車でドライアイス運搬中にドライアイスが気化して中毒を起こした例や、二酸化炭素消火装置による例などがある。

ドライアイス2キログラムは、室温だと1時間で約350グラムが気化して約200リットルの二酸化炭素になる。

車内空間が約2立方メートルの軽自動車の場合、濃度は約10%になり、密室状態にしておくと中毒を起こす条件になる。

ドライアイス販売会社は「車で持ち帰るお客さんには、窓を開けて運転するよう呼びかけています」と言う。

 二酸化炭素ガスにすばやく意識を奪う作用があることは、18世紀にはすでに分かっていたが、なぜそのような効果があるのか、仕組みはいまだに解明されていない。

大阪大学医学部麻酔学の吉矢生人教授は「二酸化炭素ガス以外にも、笑気ガスやエーテルなど麻酔効果を持つ気体はいろいろありますが、肺から吸入して脳に作用するメカニズムは、どれもわかっていません」という。

 

<呼吸や飲み物、また人工呼吸での二酸化炭素の心配は?> 

 人間は、呼吸で酸素を取り込み、二酸化炭素を放出している。

呼気中に含まれる二酸化炭素は約4%なので、口移しで空気を送り込む人工呼吸では、二酸化炭素中毒を起こす心配はない。

 炭酸飲料やビールの泡に含まれる二酸化炭素は、肺でなく胃に入る。

胃酸で気体になり、ゲップとして排出されるので、こちらも中毒の心配はない。

 

(注)大学入試「化学」の中での知識では

二酸化炭素は常温では気体で、その性質は、

「無色」「無臭」「無毒」「水に少し溶ける」です。