2022年10月の記事一覧
ノーベル平和賞 ロシアとウクライナの人権団体などに
ことしのノーベル平和賞に、
長年にわたり市民の基本的人権や権力を批判する権利を守る活動を続けてきた
旧ソビエトのベラルーシの人権活動家と、
ロシアとウクライナ、それぞれの人権団体が選ばれました。
旧ソビエトのベラルーシの人権活動家、アレス・ビアリアツキ氏は、
ベラルーシの強権的な政権から市民の人権を守る活動を続けてきました。
ベラルーシでは、
ルカシェンコ大統領が旧ソビエト崩壊後30年近くにわたって大統領をつとめ、
反政権派を徹底的に弾圧するなど、強権的な統治手法で知られ、
欧米からは「ヨーロッパ最後の独裁者」とも批判されてきました。
ビアリアツキ氏は、
ルカシェンコ政権への抗議デモに参加し拘束された人たちを支援しようと、
1996年に人権団体「春」を創設しました。
その後も、政権による人権侵害の実態を調査して告発したり、
市民へ人権についての知識の普及に努める活動を行ったりしてきたほか、
国際的な人権団体の幹部にも就任するなどして、活動の範囲を広げました。
おととしの大統領選挙で、ルカシェンコ氏の6回目の当選をめぐって、
各地で不正を訴える大規模な反政府デモが起きたのに対し、
政権は徹底的に取り締まり、
ビアリアツキ氏も去年7月に拘束され、
現在は首都ミンスクの刑務所内に収監されているということです。
ロシアの人権団体「メモリアル」は、
旧ソビエト時代の1980年代後半に活動を開始し、
ソビエトの政治弾圧を記録するなど人権擁護の活動に取り組んできました。
しかしプーチン政権によって、
スパイを意味する「外国の代理人」に指定され、
ロシアの検察当局は去年11月、
最高裁判所に「メモリアル」の解散を求めて提訴しました。
そして12月、ロシアの最高裁判所は検察側の訴えを認め、
「メモリアル」に対して解散を命じる判決を言い渡しました。
判決の当日、裁判所には多くの支持者が集まり、
一斉に抗議の声をあげました。
「メモリアル」は裁判所に異議を申し立てましたが、
ロシアがウクライナへの軍事侵攻を始めた直後の、ことし2月28日、棄却され、
「メモリアル」は解散を余儀なくされました。
また、ウクライナの人権団体「市民自由センター」は、
ウクライナの人権問題や民主化に取り組み、
ことし2月、ロシアがウクライナに軍事侵攻したあとは、
ロシア軍が行った疑いのある戦争犯罪を記録しようと、
各地で市民の聞き取り調査を続けています。
38歳の男性の公務員は、
「とてもいいタイミングの受賞だと思う。
世界の人々にウクライナの現状を知ってもらうために、
非常に重要な出来事であり、大きなプラスになる。
いま起きていることを忘れられないようにするため、
今回、受賞を決めてくれた人たちに感謝したい」
と話していました。
ノーベル平和賞の選考委員会は、
授賞理由について、
「ことしの受賞者は、それぞれの国の市民社会を代表する存在だ。
長年にわたり、市民の基本的人権や権力を批判する権利を守る活動を続けてきた。
戦争犯罪や人権侵害、権力の乱用を記録するために卓越した努力を払ってきた。
平和と民主主義のための市民社会の重要性を示している」
としています。
EUのフォンデアライエン委員長は7日、
「ノーベル平和賞の選考委員会は、
権威主義的な政治に立ち向かう人々の卓越した勇気を認めた」
と、歓迎しました。
NATOのストルテンベルグ事務総長は、7日、
「権力に対して真実を語る権利は、自由で開かれた社会の基本だ」
として、
権威主義的な政権を批判してきた活動をたたえました。
記者会見で、箕牧 代表委員は
「今回はロシアがウクライナに侵攻してそのうちのどれかが対象になるかと思っていた。
プーチン大統領にはこういうことをきっかけに、軍事侵攻をやめる決断をしてほしい」
と述べました。
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