理科のこと、環境ニュース
アンモニア合成の発明者ハーバー 「栄光と影」(2)
ベルギー西部のイーペルは、第一次世界大戦中の1915年4月、史上初めて本格的な毒ガス戦の舞台の町となりました。
催涙ガス弾などはそれまでにも使われていましたが、ドイツ軍はイーペルの草原で4月22日、致死性の高い大量殺傷用ガスを初めて用いたのです。
人の粘膜を破壊し、呼吸困難などに陥れて殺害する塩素ガスです。
これをきっかけに、ドイツ軍に限らず英仏など連合国側もたがが外れたように化学兵器を使い始めました。
双方はホスゲンなど新種の兵器を次々に投入。
第一次大戦での毒ガスによる死者は約10万人に上り、市民も含む100万人以上が負傷したといわれています。
戦争と科学の発展は切っても切れないのですが、その陰で戦闘員ではない大量の一般市民が命を落としてきました。
こうした兵器を開発した人は、どんな思いで生涯を過ごしたのでしょうか。
「平時は人類のため、戦時は祖国のため」
この塩素ガスを兵器として開発したのが、「化学兵器の父」と呼ばれるドイツの化学者フリッツ・ハーバー博士(1868~1934)だったのです。
「科学というものは、平時は人類のため。戦時は祖国のため」
それが愛国者だった彼のモットーでした。
開発に成功した時、ドイツ国内ではほとんど反対の声もなく、彼はまさに英雄でした。
彼はドイツのエリート層、特にドイツの皇帝に認められたい一心だったのです。
第一次大戦が終わった年の1918年には、過去に手掛けたアンモニア合成法の業績が認められてノーベル化学賞まで受賞しています。
もっともこの受賞には戦時中の敵国だった英国やフランスから激しい非難の声が上がりました。
ですが、ハーバーの名声はノーベル賞を機にさらに高まっていきました。
今も続く追悼式
イーペルは毒ガス戦だけでなく激しい砲撃戦の舞台ともなりました。
今、この町には当時ドイツと戦った英国側の戦没兵の名前が刻まれた門「メニン・ゲート」があります。
大英帝国戦没者墓地委員会が1927年に建立したもので、54896人の名が残っています。
英国をはじめとした連合軍兵士は、この門を起点に戦場へ向かいました。
門にはオーストラリアやインド、カナダなどからの出征兵士の名前も多く刻まれています。
祖先の追悼のため、今も世界中から多くの人々が訪れる場所なのです。
イーペルでは毎晩、戦没者の追悼演奏が行われています。
式典を主催する民間団体「ラストポスト協会」はトランペット演奏をする楽団を含め、20人以上のスタッフ全員がボランティア。
各自、仕事が終わってから門に駆け付け、15分ほどの式典を行います。
この団体幹部のベノワ・モトリーさんによると、
「1928年以降、ナチス・ドイツによる占領時代を除いて毎日続けています。追悼の思いを一日たりとも忘れないためです」
2020年には新型コロナウイルスの影響でこのイベントの続行が危ぶまれました。
ですが欧州メディアによると、今も見物客の人数を制限し、互いの距離を取りながら、追悼演奏は続けられているということです。
「英雄」を待ち受けていた運命
さて、ドイツの英雄となったハーバーはその後どうなったのか。
1933年にヒトラー率いるナチスが政権を握ると、彼の人生は暗転していく。
彼はユダヤ人だったのだ。
ナチスのユダヤ人迫害政策の影響で、徐々にハーバーは「追われる身」となる。
ドイツを愛し、ユダヤ教からキリスト教に改宗までしたハーバー。
だが彼は結局そのドイツから裏切られ、1933年に研究機関を去ることになる。
フランスに住んでいた息子を頼り、まずハーバーはパリに逃げた。
さらに英国などを転々とした後、1934年1月にスイス・バーゼルで病死した。
ライン川が流れるこの町の目と鼻の先には、彼が愛し抜いた祖国ドイツがあった。
世界はその後も化学兵器を使い続けた。
第二次大戦、ベトナム戦争、イラクのクルド人が虐殺されたハラブジャ事件、化学テロである地下鉄サリン事件、そしてシリア内戦。
第一次大戦から100年以上たった今も、それは現在進行形で人類の脅威であり続けている。
シリアではアサド政権による猛毒神経ガス・サリンなどを使った化学兵器攻撃が何度も疑われている。
だが政権側はその度に使用を否定し、国際調査も進まない。
ハーバーは毒ガスの使用について、同僚にこう説明していたという。
「むしろ使用によって戦争を早く終結させ、多くの人の命を救える」
この論理は、のちに第二次大戦で広島、長崎への原爆投下を正当化した米国側の主張にそっくりだ。
しかし大量破壊兵器の使用はこうして21世紀の今も続き、多くの人が命を失い続けているのが現実でもある。
祖国ドイツのため、化学兵器開発を誇りに思っていたハーバー。
だが彼は死の直前、息子にこんな遺言を残している。
「クララと一緒の墓に埋めてほしい」
毒ガスを開発した男が人生の最後に思い出したのは、その毒ガスの使用に抵抗した最初の妻クララだったのだ。
二人は今、スイス・バーゼルの同じ墓に眠っている。
アンモニア合成の発明者ハーバー 「栄光と影」(1)
今日、ドイツの化学者フリッツ・ハーバーについての記事が目に留まりました。
高校の化学の教科書に必ず登場するハーバーですが、自分の知らなかった一面を初めて知り、大きなショックを受けました。
ノーベル賞も受賞した彼の栄光と影について記しておこうと思います。
化学の教科書の、「化学平衡」「非金属元素窒素」の項に必ず登場するのが、アンモニアの工業的製法「ハーバー・ボッシュ法」です。
このアンモニアの合成法は、ドイツのフリッツ・ハーバーが発明し、カール・ボッシュが触媒を改良して工業化に成功させました。(1906年)
当時、このアンモニア合成法は、「水と石炭と空気からパンを作る方法」とも言われた大発明でした。
このように言われた理由ですが、パンの原料である小麦を始めとして農作物を育てるには窒素分を含む肥料の十分な供給が不可欠です。
その窒素を供給する化学肥料を生成するのにハーバー・ボッシュ法が使えるため、この方法の発見によって農作物の収穫量は飛躍的に増加したのです。
化学肥料の誕生以前は、農作物の量が人口増加に追いつかず、人類は常に貧困と飢餓に悩まされていました。
しかしハーバー・ボッシュ法による窒素の化学肥料の誕生や過リン酸石灰によるリンの化学肥料の誕生により、ヨーロッパやアメリカ大陸では、人口爆発にも耐えうる生産量を確保することが可能となったのです。
ハーバーは本法の業績により、1918年にノーベル化学賞を受賞、またボッシュは本法を応用した高圧化学反応の研究により、1931年にノーベル化学賞を受賞しています。
この方法は同時に、平時には肥料を、戦時には火薬を空気から作るとも形容され、爆薬の原料となる硝酸の大量生産を可能にしたことから、その後の戦争が長引く要因をも作りました。
その例ですが、ドイツ帝国は、第一次世界大戦で使用した火薬の原料の窒素化合物の全てを国内でハーバー・ボッシュ法を元にして調達できたのです。
一方、本法によるアンモニア合成法の開発以降、生物体としてのヒトのバイオマスを、従来よりもはるかに多い量で保障するだけの窒素化合物が、世界中の農地生態系に供給され、世界の人口は急速に増加しました。
現在では地球の生態系において最大の窒素固定源となっています。
さらに、農地生態系から直接間接双方の様々な形で、他の生態系に窒素化合物が大量に流出しており、地球全体の生態系への窒素化合物の過剰供給をも引き起こしています。
この現象は、地球規模の環境破壊の一端を成しているのではないかとする懸念も生じていますが、これについてはまだ良く分かっていません。
国際宇宙ステーション「きぼう」を見よう!
今週前半は太平洋側を中心に晴れる日が多い予報です。
空気が乾燥すると、空気が澄んで、星や惑星が一層きらめいて見えます。
星々と共に野口聡一さんも乗る国際宇宙ステーション「きぼう」も見られそうです!
見られる日にちや時間は・・・
国際宇宙ステーション・ISSは、木星より強い輝きで見えることもあり、速度も飛行機より少し遅いくらいで、肉眼で捉えやすいとのことです。
ISS自体が光っているのではなく、太陽の光を受けて光って見えるため、太陽が当たる時間や軌道などと合わせて、観測に最適な日があるようです。
とりあえず、今日と明日ですが・・・
<9日(水)午後5時52分頃の目視予想>
西日本や東日本(四国・中国~北陸や関東)では、9日(水)の午後5時50分過ぎから午後6時前までで、高度が高く、かなり見えやすくなりそうです。
東日本はやや雲が多いものの、西日本はよく晴れるので、観測に最適となりそうです。
関東は、昨日8日の方が観測しやすかったようですね・・・
12/9(水)17:50ごろから
12/10(木)17:05ごろから
この他にも観測しやすい日は、一年を通して地域ごとにあり、それぞれ異なっています。
今日見えなくても、観測のチャンスはまだありますよ!
JAXAのホームページ、きぼうをみよう(http://kibo.tksc.jaxa.jp/)から調べてみてください。
「きぼう」が見えますように!
はやぶさ2 生命の起源有機物見つかるか?
Q.なぜ小惑星を探査するのか?
A.小惑星を探査するのは、それによって「太陽系の起源と進化」と「生命の材料(有機物)の進化」という根本的ななぞの理解が進む と期待されているからです。
「はやぶさ2」では、太陽系形成初期の情報を保持しており、しかも有機物と水の存在しているC型小惑星(リュウグウ)から試料を採って帰ります。
それは、人間がこれまで手にしたなかで最も始原的なものであり、地球の汚染もありません。
したがって、試料を分析し、その結果を試料の地質情報(小惑星の構造・物質分布・熱の様子などの情報)ととも に読み解くことによって、以下のような研究を大きく進めることができると考えられています。
(1)生命の材料(有機物)は地球で進化したのか、小惑星などの宇宙から輸送されてきたのか?
(2)小惑星では有機物はどのように進化したのか?
(3)地球の海水はどこから供給されたのか?
(4)太陽系の材料はどのようなもので、どのように形成され、どのような進化を遂げたのか?
Q.なぜ小惑星には太陽系ができたころの痕跡が残っていると考えられるのか?
A.地球の岩石や砂を調べても太陽系のできたときの姿はわかりません。
地球をつくった元の物質は地球が誕生する過程でどろどろに溶けてから固まっているため、そのころの 情報は失われているからです。
一方、リュウグウのような小惑星は熱的な影響は小さく、昔の状態をよく保持していると考えられます。
Q.なぜリュウグウがターゲットとして選ばれたのか?
A.主に以下の3つの理由からです。
(1)C型小惑星(有機物や水を多く含む、始原的な天体)のひとつであるからです。
(2)微惑星の衝突破壊で生成された破片天体と推定されているので、微惑星を作った物質が 何なのかを直接に確かめることができます。
(3)軌道はほぼ地球と火星の間に収まっているので、地球から比較的短い距離で到達できます。(C型小惑星の多くは火星と木星の間にあります)
太陽系と生命の起源と進化のなぞを明かす試料の分析
太陽系と生命の起源と進化のなぞの解明という壮大な目的のためには、リュウグウより採ってきた試料の分析が決定的に重要です。
まず重要なのは、リュウグウで採取した試料をそのままの状態で物質や熱の汚染なしに地球まで持ち帰ることです。
試料を格納するサンプルキャッチャーは、3カ所から採取された試料が混ざることなく、3部屋で個別に保管される構造を持っています。
サンプルコンテナは、サンプルキャッチャーを完璧に密封して保管し、地球に帰還す る構造を持っています。
地球に突入すると空気との摩擦で表面は最高で3000℃になりますが、内部は最高でも50℃以下に保たれます。
このようにして地球へ持ち帰った試料の初期分析は6つの国際チームによって行われます。
このうち3チームのリーダーが九州大学の先生方です。
東北大学の中村教授も以前は九州大学の所属でした。
「はやぶさ2」の試料分析では九州大学が世界をリードしていると言えます。
今日深夜から明日未明に獅子座流星群
今日11月17日、しし座流星群の活動が極大となります。
予測極大時刻は17日20時ごろですが、このときには放射点が地平線の下なので、しし座が昇ってくる18日未明から明け方ごろが一番の見ごろとなるそうです。
月明かりの影響はないようですが、活動は低調とみられるので、空の条件の良いところでも1時間あたり5~10個程度とのこと。
観測は防寒の準備を万全にして。
21日の未明に別の出現ピークが見られるという可能性の予報もあるので少し気にかけておきたいですね。
これまでも大出現で有名なしし座流星群ですが、
テンペル・タットル彗星の通り道を毎年この時期に地球が通過し、そこに残されていた塵が地球の大気に飛び込んで上空100km前後で発光して見える現象だそうです。
しし座流星群の特徴は?
(1)スピードが速い
しし座流星群の流れ星の速度は秒速71kmに達し、国際天文学連合がまとめた64の主要な流星群の中で、最もスピードが速い流星群とされています。
よく、流れ星が流れている間に3回願い事をすると叶うと言われていますが、願い事を唱えるのが一番難しい流星群とも言えそうです。
(2)明るい流れ星が多い
しし座流星群は全体的に明るい流れ星の割合が高く、火球と呼ばれるひときわ明るい流れ星も多く観測されます。
(3)流星痕が観測できることも
明るい流れ星が流れた後、その流星の軌跡上で雲のようなものが淡く輝く「流星痕」を観測できることがあります。
しし座流星群は明るい流れ星が多いため、流星が流れた「あと(後・跡・痕)」にも注目して観測するのも良さそうです。
地球衝突!? 小惑星への対策は?
「地球衝突!? 小惑星への対策は」
JAXA 宇宙科学研究所 准教授 吉川 真
天体の地球衝突が現実に起こっています。
最近では、4年前の2013年に、ロシアのチェリャビンスク州に落ちた隕石があります。
このときには、100キロメートル以上にわたって、建物の壁や窓ガラスが壊れ、1500人以上の人がけがをしました。
落ちてきた隕石は20メートル程度の大きさと言われており、発生した衝撃波によって被害が広範囲に及びました。
さらに100年ほど前の1908年には、シベリアでツングースカ大爆発と呼ばれる出来事がありました。
このときには、森林が約2000平方キロメートルにわたって被害を受けていますが、その原因は大きさが60メートルくらいの天体の衝突だと言われています。
地球の歴史、あるいは生命の歴史を見ると、今から6600万年くらい前に、恐竜をはじめとして多くの生物種が絶滅しましたが、その原因として最も注目されているものが天体の衝突です。
大きさが10キロメートルくらいの天体が、メキシコのユカタン半島付近に衝突して、その後、地球の環境が変化しました。
その変化した環境に適応できなかった生物が滅んだというわけです。
大きさが数十メートルくらいの天体でも地球に衝突すれば地域的には大きな被害を受けますし、大きな天体ですと人類絶滅につながるかもしれない・・・ということが1990年代から広く認識されるようになり、天体の地球衝突という問題に対応する活動が始まりました。
これがスペースガードあるいはプラネタリー・ディフェンスと呼ばれる活動です。
スペースガードの活動で重要なことは、地球に衝突する可能性がある天体を発見して、その軌道を正確に把握することです。
天体の軌道が正確に分かると、計算によってその天体が地球に衝突するかどうか、そしてもし衝突する場合には、いつどこに衝突するかが完全に予測できます。
これは、何十年も先の日食や月食が正確に予報できるのと同じです。
つまり、天体衝突による災害というものは、その天体さえ発見して軌道を推定しておけば、完全に予測可能な災害なのです。
地球に接近しうる天体のことをNEO(ニア・アース・オブジェクト)と言います。
具体的には小惑星とすい星(ほうき星)がありますが、1990年代から多くのNEOが発見されるようになりました。
小惑星は、現在すでに73万個以上も発見されています。
その中の、NEO地球に接近しうる小惑星は、約1万6000個が発見されています。
これら発見されている小惑星につきましては、軌道が計算されており、少なくても今後100年くらいは地球に衝突する恐れはないことが分かっています。
しかし、まだまだ発見されていないNEOがたくさんあるのです。
こちらの図には、地球接近小惑星の発見個数の推移が示されています。
このように年を経るごとに発見されている地球接近小惑星の数が増えていくことが分かります。
ただし、大きさが1500メートル以上のものについては、最近はあまり増加していないことも分かります。
これは、この大きさの地球接近小惑星がほぼ発見し尽くされてきたことを意味しています。
ところが、それより小さなものはどんどん数が増えていますから、まだ未発見のものが多いわけです。
まずは、未発見の天体を見つけて軌道を推定することが重要です。
では、もし地球に衝突する天体が発見されたらどうしたらよいでしょうか?
2017年5月に、スペースガードについて議論をする国際会議が東京で開催されました。
この会議では、大きさが300メートルくらいの天体が東京に衝突するという設定で議論が行われました。
もしこのような衝突が起こると東京は壊滅状態になりますから、是が非でも衝突を回避する必要があります。
小惑星のような天体が地球に衝突するのを回避するために、いろいろな方法が提案されています。
その中で、現時点で技術的に可能な方法は、宇宙船のような人工物体を小惑星に衝突させてその軌道をずらす方法です。
映画によくあるように、地球に衝突してくる天体を爆破するのは意味がありません。
仮に天体を爆破できたとしても、破片が地球に降ってくるので被害を回避することはできないからです。
天体を爆破するようなことはせずに、その軌道を変えることが適切な衝突回避策になります。
しかし、宇宙船を衝突させたとしても小惑星の軌道の変化はごくわずかです。
したがって、なるべく早めに対処する必要があります。たとえば、ある小惑星が20年後に地球に衝突するとして、今のうちに宇宙船をその小惑星に衝突させて軌道を少しずらしておきます。
すると、20年後にはそのずれが大きくなって地球に衝突せずにすむというわけです。
すでに米国では彗星に探査機を衝突させるミッションを行っていますし、日本も「はやぶさ」探査機を小惑星に送ることに成功しています。
ですから、技術的には十分可能です。
ただし、この方法は、天体衝突までに十分な時間があることに加えて、相手の天体があまり大きくない場合でしか有効ではありません。
地球に衝突してくる天体の大きさが数百メートルくらいまででしたらよいのですが、それより大きいと、宇宙船を衝突させたくらいでは小惑星の軌道は変化しないのです。
衝突してくる天体が大きい場合には、より大きな力で小惑星の軌道を変える必要があります。
これは、エネルギー的に考えると、核エネルギーに匹敵します。
実際、小惑星の軌道を変えるために核爆弾が使えるかどうかの研究もなされています。
本当に地球衝突がある場合には、いろいろな手段を検討することになるかと思いますが、現時点では核の使用については慎重であるべきだと思います。
天体の地球衝突というと衝突回避が注目されがちですが、天体衝突という情報が流れたときに人々がパニックに陥らないかとか、経済的なダメージはどうなるのか、さらには衝突回避を誰が行うのか、そして仮に衝突回避に失敗したら誰が責任を負うのかなど、複雑で難しい問題がいろいろとあります。
大きな災害を伴う天体の地球衝突は、めったに起こることではありません。
しかし杞憂ではなく、いつの日か必ず起こることです。
いたずらに恐怖心をあおることなく、冷静で着実な対応を進めていくことが重要です。
天体の地球衝突は、天体を発見しその軌道を把握しさえすれば、完全に予測可能な自然災害なのです。
マンホール内での中毒事故
昨夜、茨城県土浦市で下水道の汚泥を取り除く作業にあたっていた作業員の方2人が相次いでマンホールの底に転落し、亡くなりました。
これまでの調べによると、作業員Aさんは下水道内での作業を終えて地上に出ようとした際にマンホールの底に転落し、助けに向かおうとした作業員Bさんも転落したということです。
消防によると、現場からは猛毒の硫化水素ガスなどが検出されたということです。
この2人の方は、作業を終えてさあ帰ろうとしていた矢先だったと思われ、本当に痛ましい事故だと思います。
マンホール内での硫化水素発生の事故は時々耳にしますし、また自分も、下水付近で硫化水素の臭いに気づくことが時々あるんです。
下水で硫化水素が発生するのはなぜなのでしょうか?
原因を調べてみました。
下の図は、下水管が腐食される時の概念図です。
下水中の硫酸イオンSO42-は、ごく普通に存在するようです。
でも、この硫酸イオンが炭素Cと水H2Oに接触し、細菌(硫酸塩還元細菌)の働きで硫化水素H2Sに還元されてしまうというのは、本当に驚きですね!
安定な硫酸イオンに変化していくのが、通常の環境での反応だと思います。
酸素の少ない環境では、嫌気性のこの細菌がこのような反応を起こさせるんですね!
そして、発生した硫化水素は、酸素の多い環境では、今度は好気性の硫黄酸化細菌により一気に硫酸H2SO4に酸化されるということのようです。
ここで生じた硫酸は、下水管やマンホールのコンクリートや鉄筋を腐食する害を生み出すんですね。
換気の悪い下水周辺、または汚泥や汚水が溜まっているような場所では、「猛毒の硫化水素ガスが普通に発生している可能性がある」ということは頭に入れておいた方がいいと思います。
神奈川県の異臭騒ぎのこと
ここ数日神奈川県内で異臭騒ぎが相次いでいます。
今日のニュースで知ったんですが、この異臭は6月から続いているそうです。
「ガスのような臭いがする」「ゴムが焼けた臭いがする」といった通報が寄せられているそうです。
この事件について、周辺の大気を採取し分析を進めていた横浜市が13日に会見を開きました。
「ガソリン等の燃料の蒸発ガスに含まれるイソペンタンやペンタン、ブタンといったものが、通常の大気中に比べて高い濃度で検出された」
「また、化学製品の原材料や物を燃焼した際に発生するエチレンやアセチレンも検出された」
ということです。
異臭の発生源は現時点では不明で、直ちに健康に影響を及ぼすことはないということも発表されました。
さて、検出された物質は、すべて高校教科書でも出てくる比較的炭素数の少ない炭化水素です。
①ペンタン C5H12(CH3CH2CH2CH2CH3)
②イソペンタンC5H12(CH3CH2CH2(CH3)2)
③ブタンC4H10(CH3CH2CH2CH3)
④エチレンC2H4(CH2=CH2)
⑤アセチレンC2H2(CHΞCH)
①、②は揮発性の高いベンジンのような液体で、気化した気体はベンジンやガソリンのような臭いがします。
また、④は気体で、かすかに甘い臭いがしますが、熟れた果物もこの気体を発しているので臭いを想像できるのではないでしょうか?
残りの③、⑤は無臭の気体です。
アセチレンには臭いがあると経験している人がいるかもしれませんが、カルシウムカーバイドと水の反応で生じたアセチレンガスは臭いのある不純物を含んでいるのです。
純粋なアセチレンは無臭です。
ということで、「ゴムが焼けた臭い」に関連するような物質はなさそうですよね?
異臭の原因がはっきりと究明されて欲しいと思っています。
火星大接近
明日10月6日夜、火星が地球に大接近します!
夜11時18分に最接近とのことです。
夜空を見上げた時、火星の位置関係は以下のようになるそうです。
色や明るさなど、どんな感じに見えるのでしょうか?
台風10号が予想よりも勢力を弱めた理由
未曽有の強さと予測されていた台風10号が去っていきました。
亡くなられた方、怪我をされた方、行方不明の方は100名以上いらっしゃるようです。
ただ、不幸中救われたことがあったと分析されていました。
それは、台風が予想のようには成長しなかったことだというのです。
台風10号が当初の予想よりも勢力を弱めた理由について、専門家は、直近に同じようなコースをたどった台風9号の影響で海面水温が下がり、「動力源」となる水蒸気を十分に取り込めなかったためとみている。
10号は6日午前に奄美地方へ接近しながら急速に衰退。中心気圧が945hPaに上がり、特別警報の発表は見送られた。
勢力が弱まった主な要因として、海面水温の低下が挙げられる。
気象庁によると、8月の九州近海の海面水温は熱帯並みに高かったが、9号が通過した9月2日頃を境に低下したとみている。
海上を台風が進むと、海面近くの温かい水と深い場所の冷たい水が強風でかき混ぜられたり、雨雲に日光が遮られたりして水温が下がる。
勢力が少し弱まったタイミングで水温の低い海域を通ったことで、衰退が加速したのではないかと考えられる。
水温低下に加え、上空の気流が影響し、台風の構造が崩れやすくなったことも一因になった可能性がある。
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