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100平方センチメートルの面積にかかる大気圧による力は?

 以前、「1辺10センチの正方形にかかる大気圧による力の大きさはどれくらいか?」

と問題にしましたが、その解説を書きたいと思います。(遅くなってすみません)

 

 まず大気圧の大きさですが、1013hPa(ヘクトパスカル)と覚えていると思います。

ここでのh(ヘクト)は単位の接頭辞で、100を表しています。

すると、

1013hPa = 101300Pa

これは約100000Pa(10万パスカル)

となりますね。

 また、1Pa(パスカル)の定義ですが、1mの面積に1N(ニュートン)の力が加わる大きさの圧力となっています。

 

 さて、1kgの質量の物体にかかる重力の大きさ(つまり重さ)を考えてみます。

W = mg = 1kg × 9.8m/s= 9.8kg・m/s=9.8N ≒ 10N

となるので、

1kg重 ≒ 10N

ということは、

1N ≒ 0.1kg重

となります。

ですから、こう覚えておくといいと思います!

「1Paとは、1平方メートルに約100グラム分の重さがかかる圧力」

そして、大気圧1013hPaは、

「1平方メートルに約1万キログラム分の重さがかかる圧力」

となりますね!

 

 次は、1辺10cmの正方形の面積をm単位で求めてみましょう。

10cm=0.1m

ですから

(10cm)=(0.1m)

よって

100cm=0.01m

となります。

 

 さあ、最後の答えを出してみましょう!

1辺10センチの正方形にかかる大気圧による力の大きさは?

100000Pa × 0.01m =1000N

そして、この1000Nは、約100kg重となります! 

「1辺10センチの正方形にかかる大気圧による力の大きさは約100kg重!」

ちょっと信じられない重さだと感じませんか?

そして1平方メートルには、この100倍の10000kg重つまり10トン重の重さが加わっていることになるんですね!

結露で校舎内の床が広範囲に濡れる

 今朝の校舎内の床、特に廊下の床面は結露のため広範囲に濡れていました。

校舎内の、特にコンクリートにリノリウムを貼った「冷たい床」は全て濡れているような状況でした。

この現象はそれほど頻繁に発生する訳ではないんですが、ちょうど今頃発生しやすいと思います。

外気温が上がってきているんだけど、校舎全体はまだ温まっていなくて壁や床は冷たいくらいの時期ですね。

そんな時期に、雨が降るような蒸し暑い大気が校舎内に入ってくると、大気中の水蒸気が校舎内の冷たい所で結露します。

今日気付いたと思いますが、床だけでなく壁や金属製の手すり、窓枠なんかも濡れていたと思います。

湿度の高い大気が入ってきても、校舎の温度が低くなければ結露は起こらないんですね。

校舎のようなコンクリート製の建物は比熱が大きく、すぐに温まったりすぐに冷えたりしにくいんです。

ということで、急に外気温が上がってその大気の湿度が高い時にこの現象は発生する訳です。

でも、校舎の窓や入口が開いていない時は、気密性が割と高い校舎の中に大気は入っていきません。

登校時校舎の入り口が大きく解放されて、暑いからとたくさんの窓も開けられると一気にこの結露が起こる訳ですね。

 梅雨時期でなくても、台風が生ぬるい湿った空気を持ってくる時にも同じようなことが起こります。

台風の時は風が強いので、ドアや窓を閉め切っていても隙間から大気が入り込んできて結露が起きるんです。

今度同じようなことに遭遇したら、良く観察してみて下さい。

床が濡れているのは、外の雨が入り込んできたからではないんですね。

 

 さて今日このような状況で、校舎内で滑りそうになりませんでしたか?

上履きはスリップに対して強くはないと思うので、充分に気を付けて下さい!

スリップして転倒すると大ケガになることもありますから!

シンプルだけど良く考えられた実験(詳細)

 前回ざっと書いたこの実験について、原理も含めて記録しておきたいと思います。

フラスコ内の水をしばらくの間沸騰させると、水蒸気が発生しフラスコ内の空気は追い出され水蒸気だけになります。

火を止め、フラスコにピペット(俗称スポイト)を刺したゴム栓をはめ込むのですが、このゴム栓はこんな感じに作ってあります。

これをフラスコにこんな感じにセットします。

フラスコ内の温度が下がっていくと、内部の水蒸気は凝縮して液体の水になっていくので、フラスコ内部の気圧が下がっていくことになります。(フラスコ内の気体分子が減っていくから)

するとフラスコ内は100℃を下回っているにもかかわらず水が沸騰することになるんですが、これを減圧沸騰と呼んでいます。

フラスコ内の湯から泡が出ていて沸騰している様子が分かるでしょう?

フラスコの内部がいつも水面を押さえつけていた大気圧より低い圧力となるため、100℃を下回る温度でも沸騰できるようになるという訳です。

「高い山の山頂では気圧が低く、100℃にならずにお湯が沸騰する」と聞いたことがあると思いますが、これと同じ理由です。

 ちなみに圧力なべはこの逆で、なべに閉じ込めた水蒸気でなべの内部が高圧になるようにしてあるんです。

こうすると100℃を超えないと水が沸騰出来ないことになり、100℃を超える温度で調理が出来ることになる訳ですね。

 さて、減圧沸騰がしばらく続くと水蒸気が新たに生じるためフラスコ内部の圧力は上昇していきますよね。

すると沸騰が収まっていく訳ですが、フラスコと中の湯は外気にさらされ続けているので冷えていく一方です。

下の2つの写真では、水蒸気の凝縮がより多く起こってきてフラスコ内に水滴が沢山付着してきている状況が分かると思います。

さあ、生じた水蒸気が冷えてまたまた減圧沸騰が起こるより早くフラスコ全体が冷えるとどうなるでしょうか?

フラスコ内部の水蒸気が急激に凝縮すると、内部の圧力も急激に減少します。

ここでピペットのゴム球に着目して下さい!

ゴム球の内部は外の大気に通じているのでゴム球内部は大気圧によって外側に押され続けています。

ここでフラスコ内部つまりゴム球外部の圧力がすごく小さくなったらどうなるでしょう?

ゴム球は内側から押されている力で大きく膨らむことになりますよね?!

ごらんの通り、すごく見栄えのするはっきりとした結果になりました!

この実験はやってみた後で気付いたんですが、とても良く考えられているんですね!

まず、ピペットのゴム球の代わりに普通のゴム風船で実験する例があるんですが、風船は軟弱なのですぐ膨らんでしまって減圧沸騰がしっかりと見られないのではないかと思います。

そして、ピペットのゴム球に隙間なく接続できるのはガラスピペットの本体ですよね?

さらに、ピペット本体とゴム球の接続を確実にするために結束バンドを使っていることも良く考えたと思います!

さて、この実験の全体像と原理は見えたでしょうか?

 最後に問いを1つ書いておきたいと思います。

1辺10センチの正方形つまり100cmの面積にかかる大気圧による力はどれくらいだと思いますか?

答えは次回に!

シンプルだけど良く考えられた実験

 まずフラスコ内の水を沸騰させます。

火を止め、ピペットを付けたゴム栓をはめます。

放置して冷やすと、少し間をおいて減圧沸騰が始まります。

そして、さらにフラスコを冷やすと、最終的には・・・

さて、こうなる理由は・・・?

CO2排出削減の救世主的技術、二酸化炭素そのものを回収する方法!

 すでに大気中に排出されてしまった二酸化炭素CO2、あるいは、これからもまだ排出されるであろうCO2そのものを、どのように除去したらいいのでしょうか?

その最先端技術の紹介です。

 

自然界における二酸化炭素循環

 人類が化石燃料を使う前、地球上においてCO2は基本的に水や酸素と同様に、増えもせず減りもせず、うまく循環していたはずです。

地球化学的循環は数百万年オーダーの変動で、大気中のCO2は水に溶け、やがて炭酸カルシウム(CaCO3)となって固体になり、火山の爆発によりCO2が大気中に出て、また水に吸収されるという循環サイクルが完成します。

生物学的循環は数万年オーダーの変動で、植物は大気中のCO2と水から光合成によりデンプンやセルロースを生成。

この時に酸素が発生し、動物は酸素を吸ってCO2を吐いています。このように、CO2や酸素はバランスよく循環しています。

これが自然の摂理です。

さて、人為的CO2排出ですが、人類最初の化学反応は火を使った燃焼でした。

人類は、火を使って木や草を燃焼させエネルギーを獲得してきました。

木や草は炭素を骨格とした有機化合物からできていますので、燃やせばCO2が発生します。

この燃焼という化学反応は現在でも行われており、重要なエネルギー獲得手段になっているのは周知の通りです。

そして人類は、有機化合物からできている石炭・石油・天然ガスといった化石燃料を大量に燃やし、地球化学的循環や生物学的循環に比べて微々たる短期間、過去200年の間に、一方的に大量のCO2を排出してきました。

この人為的に排出されたCO2はリサイクルされておらず、CO2は大気中に溜まる一方です。

では、CO2はどのように削減すればいいのでしょうか。

 

二酸化炭素そのものを直接回収するには

 今注目を集めているのは、化石燃料をできるだけ使わない、あるいは再生エネルギーの活用などの間接的削減といったことではなく、CO2そのものを直接回収して削減する技術です!

この技術は、ダイレクトエアキャプチャー(DAC)と呼ばれますが、経済や社会活動に制約を与えることなく、CO2だけを削減することができる温室効果ガス削減の救世主的方法と言えるでしょう。

以下、いくつかの研究・開発例を紹介します。

 

<神戸学院大学・稲垣教授考案>

 アンモニア(NH3)など窒素原子を含む化合物であるアミン類がCO2を吸収することは周知の事実ですが、一緒に水を吸収してしまう欠点がありました。

しかし最近、メタキシリレンジアミンを用いると、この欠点を克服できることが見出されました。

吸収されたCO2を取り出すためには一般的には高温が必要ですが、この場合にはCO2吸収後、比較的低温の120℃でCO2を放出しますので、早期の実用化が望まれます。

 

<公益財団法人 地球環境産業技術研究機構考案>

 CO2を吸収する化学吸収液(2ーイソプロピルアミノエタノール水溶液にピペラジン誘導体やエタノールアミン誘導体を含むもの)や、固体吸収材(多孔質のシリカゲルにアミンを担持させたもの)を開発しています。

こうしたCO2を化学的に吸収する方法の開発は重要です。

 

<日本CCS調査株式会社考案>

 現在、日本CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)調査が、苫小牧沖の海底1000m以上の深さにある隙間の多い砂岩などからできている貯留層に、製油所から排出されるCO2を大気放出前に回収(活性アミンプロセス)して貯留する実証プラントを稼働させています。

かなり大掛かりな施設ですが、こちらも実用化が期待されます。

 

<JFEエンジニアリング株式会社考案>

 清掃工場から排出される排ガスからCO2を回収して利用するCCU(Carbon Capture and Utilization、二酸化炭素回収利用)プロセスの実証実験を開始すると発表しました。

このプラントのCO2吸収方法も、天然ガスプラント建設等で実績のあるアミン吸収法です。

CO2回収を清掃工場に適用すると、ごみに含まれるバイオマス分を合わせた「ネガティブカーボン(CO2回収量>排出量)」を達成することが可能になります。

 

<日揮株式会社考案>

 セラミック製のゼオライト膜を活用したCO2分離・回収技術の実証試験を米国テキサス州で開始しています。

日本ガイシと共同開発したゼオライト膜は1ナノメートル以下の微細な穴を多く持つのが特長で、ちょうどCO2を通す大きさなので、原油生産時に出てくるメタンなど他のガスから分離することができます。

抗菌シート・ワサオーロ

 職場でお弁当が出る日が1年に数回あるんですが、ある日のお弁当を開けてみると、何やら文字の書いてあるプラスチック製フィルムが蓋のように置いてありました。

この写真の背景はグレーですが、薄い透明なシートに白字で印刷がしてありました。

ワサオーロ?

「ーロ」の所は読み方があるのでしょうか?

この5文字で登録商標(TM)になっているようですから、何か意味が込められているんだと思います。

ネット上で調べてみたら、次のようなことが書いてありました。

天然素材を使った抗菌シートなんですね!

 

 三菱ケミカルフーズ株式会社は、食品向け抗菌・鮮度保持シート『ワサオーロ』を開発しました。

ワサオーロは、ワサビやカラシの辛味主成分であるアリルカラシ油(アリルイソチオシアネート)を主剤とした抗菌・鮮度保持シートです。

消費期限の短いお弁当やお持ち帰り食品の品質保持適しています。

菌やカビ・酵母の増殖を抑える特性があり、食品にシートをかぶせて蓋をすることで、速やかに抗菌効果を発揮します。

グレタさん痛烈批判「各国が掲げるのは架空の目標」

 スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさんは、世界のリーダーが参加するオンラインの会合で、各国の気候変動問題への取り組みについて「架空の目標」を掲げていると痛烈に批判しました。

 

「世界中のリーダーは気候の緊急事態といいますが、危機の中、すぐに行動する代わりに、彼らは漠然として不十分で架空の目標を掲げています」

 世界の政財界のリーダーが参加する「ダボス会議」の主催者がオンラインで開いた会合で、グレタさんは日本を含め各国が掲げる2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロとする目標について、「漠然として不十分で架空」だと指摘。

「夜中、家が燃えているのに、10年、20年、30年後に消防署に電話するようなものだ」と厳しく批判しました。

 さらに「国民の意識が低いために、リーダーたちはほとんど何からも逃げることが出来る」として、この問題に関心を持つよう広く呼びかけています。

カーボンリサイクルで二酸化炭素を燃料に?!

 「カーボンリサイクル」と聞けば、炭素の再利用だろうと考えます。

人間が利用しているエネルギーの大部分は、石油などの化石燃料を燃やすことで得ています。

「カーボンリサイクル」とは、その結果で生じる二酸化炭素を再利用する技術ですね。

そのリサイクルのうち、「プラスチックのような炭素化合物の原料に二酸化炭素を使う」といったようなことは可能なんだろうなと思います。

ところが、「エネルギーを放出して出来た二酸化炭素を燃料に利用する」と聞けば、ちょっと信じられない驚きを感じます!

でも良く考えてみれば、植物にはそれが出来ているんですよね!

光合成による炭酸同化作用です。

二酸化炭素と水から、酸素と炭水化物を生産している訳ですが、光エネルギーを得ながらこの反応を起こしています。

この結果、生じた炭水化物は光からのエネルギーを蓄えたもの、つまり燃料として利用できるものとして出来上がっている訳です!

人工的にこの光合成を真似することが未だに出来ない訳ですが、このような反応が他にもあるのではないだろうか・・・

 

 地球温暖化の原因になっているといわれるCO2の排出量を減らすことは、今やグローバルな課題になっています。

エネルギー分野においては、CO2排出量の少ないエネルギー資源への転換をはかること、省エネルギーに努めることなどが大切です。

加えて、CO2を分離・回収して地中に貯留する「CCS」、分離・回収したCO2を利用する「CCU」も、大気中のCO2を削減するための重要な手法として研究が進められています。

このようなCO2の利用をさらに促進するべく、研究開発をイノベーションにより進めようという取り組みが、「カーボンリサイクル」です。

 CCUでこれまで一般的だったのは、「EOR(原油増進回収技術)」と呼ばれる手法への利用です。

たとえば、油田にある原油をできるだけ回収するためには、水などを、圧力をかけて注入し、岩石の小さな穴などに溜まっている原油を押し流します。この時、水の代わりに炭酸ガスを圧入するのが、CO2を使ったEORです。

もうひとつ、現在一般的なCO2の利用先としては、ドライアイスや溶接などに直接利用する方法があります。

しかし、こうした方法だけでは、利用されるCO2の量は限られてしまいます。

そこで、CO2を“資源”ととらえ、素材や燃料に再利用することで大気中へのCO2排出を抑制する、そのために世界の産学官連携のもとで研究開発をおこないイノベーションを進めていこうとする取り組みが、経済産業省が提唱する「カーボンリサイクル」です。

 

 CO2の利用先としては、①化学品、②燃料、③鉱物、④その他が想定されています。

①化学品では、具体的には、ウレタンや、プラスチックの一種でCDなどにも使われるポリカーボネートといった「含酸素化合物」が考えられています。

また、バイオマス由来の化学品や、汎用的な物質であるポリプロピレンやポリエチレンなどの樹脂も利用先となりえます。

②燃料では、光合成をおこなう小さな生き物「微細藻類」を使ったバイオ燃料や、バイオマス由来のバイオ燃料がCO2の利用先として考えられています。

③鉱物では、「コンクリート製品」や「コンクリート構造物」が考えられています。

具体的には、コンクリート製品などを製造する際に、その内部にCO2を吸収させるものなどです。

④その他として、バイオマス燃料とCCSを組み合わせる「BECCS」、海の海藻や海草がCO2を取り入れることで海域にCO2が貯留する「ブルーカーボン」などが考えられています。

これらは総称して「ネガティブ・エミッション」と呼ばれます。

新型コロナウィルス等の殺菌用LEDを開発、量産へ

 発光ダイオ―ド(LED)製造大手の日亜化学工業は、LEDで紫外線を照射して新型コロナウイルスを不活化して殺菌にも利用できる装置を開発したと発表した。

 

 空気清浄機やエアコンなど家電の内部に取り付けたり、紙類などの消毒に活用できたりする可能性がある。

ただし、人体への影響を考慮すると、肌に直接照射することは困難という。

二酸化炭素は「無毒」と教わりますが、実は怖い中毒も!

 昨日12月22日午前、名古屋市のホテル地下駐車場で、充満した煙を吸うなどして、作業員と周辺の方11人が病院に搬送され、このうち50代の男性作業員が死亡しました。

二酸化炭素を発生させる消火設備が作動し、煙が充満したとみられています。

この消火設備は二酸化炭素を注入することで酸素の濃度を16%以下にし火を消す仕組みです。

 二酸化炭素の消火設備は、スプリンクラーで水をかけられない、主にコンピューターなど電気設備のある場所で使われていて、火災報知機と連動して自動で動くものもあるといいます。

一方、二酸化炭素は人体に悪影響を及ぼす可能性があるため、最近は窒素などで代用されることが多いといいます。

 

 この事件では、不幸なことに犠牲になられた方が出てしまいました。

そして、この報道中にもある「酸欠とは別の二酸化炭素の有害性」について、過去の事故を思い出したので記しておこうと思います。

 

 1997年7月12日夜、青森県八甲田山のくぼ地で、訓練中の自衛隊員3人が死亡する事故が起きた。

死因は、火山性の二酸化炭素ガスと見られている。

コーラやビールの気泡やドライアイスなど、身近な存在でもある二酸化炭素。

実は、人間や動物をあっという間に倒す怖い一面を持っている。

しかし、毒性の仕組みはまだ良く分かっていない。

 

 どんな条件の時、二酸化炭素の中毒は起きるのか。

事故の翌日、現地のガス成分を調べた報告書によると、くぼ地での二酸化炭素濃度は15~20%だった。

大気中の二酸化炭素濃度は約0.03%なので、このくぼ地では、通常の約500倍もの濃度があったことになる。

 二酸化炭素が原因だとすると、自衛隊員らが倒れたのは酸素が欠乏したせいか?

れとも高濃度の二酸化炭素そのもののせいだろうか?

 命にかかわる酸素欠乏は、空気中の酸素濃度が12%を下回った時と言われている。

二酸化炭素濃度が20%の時の酸素濃度は16.7%で、致命的な酸欠状態とは言えない。

一方、一般的に二酸化炭素を30分間吸い続けても後遺症がない「脱出限界濃度」は5%とされている。

10%の二酸化炭素を吸うと、耳鳴りやふるえが起き、1分間で意識を失う。

30%になると、即座に意識不明の状態になる。

酸素20%、二酸化炭素80%の気体を犬に吸わせたら、1分で呼吸が止まり、数分で死亡したという報告があるという。

この実験は、大気と同じ濃度の酸素(大気の酸素濃度は約20%)があっても、二酸化炭素が一定量以上あれば、中毒を起こすことを示している。

 1986年8月、西アフリカ・カメルーンでは、湖から火山性の二酸化炭素ガスが大量に噴出、湖の近くで、村人約1200人のほぼ全員が死亡する事故が起きている。

 火山性ガス以外では、車でドライアイス運搬中にドライアイスが気化して中毒を起こした例や、二酸化炭素消火装置による例などがある。

ドライアイス2キログラムは、室温だと1時間で約350グラムが気化して約200リットルの二酸化炭素になる。

車内空間が約2立方メートルの軽自動車の場合、濃度は約10%になり、密室状態にしておくと中毒を起こす条件になる。

ドライアイス販売会社は「車で持ち帰るお客さんには、窓を開けて運転するよう呼びかけています」と言う。

 二酸化炭素ガスにすばやく意識を奪う作用があることは、18世紀にはすでに分かっていたが、なぜそのような効果があるのか、仕組みはいまだに解明されていない。

大阪大学医学部麻酔学の吉矢生人教授は「二酸化炭素ガス以外にも、笑気ガスやエーテルなど麻酔効果を持つ気体はいろいろありますが、肺から吸入して脳に作用するメカニズムは、どれもわかっていません」という。

 

<呼吸や飲み物、また人工呼吸での二酸化炭素の心配は?> 

 人間は、呼吸で酸素を取り込み、二酸化炭素を放出している。

呼気中に含まれる二酸化炭素は約4%なので、口移しで空気を送り込む人工呼吸では、二酸化炭素中毒を起こす心配はない。

 炭酸飲料やビールの泡に含まれる二酸化炭素は、肺でなく胃に入る。

胃酸で気体になり、ゲップとして排出されるので、こちらも中毒の心配はない。

 

(注)大学入試「化学」の中での知識では

二酸化炭素は常温では気体で、その性質は、

「無色」「無臭」「無毒」「水に少し溶ける」です。