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シンプルだけど良く考えられた実験(詳細)

 前回ざっと書いたこの実験について、原理も含めて記録しておきたいと思います。

フラスコ内の水をしばらくの間沸騰させると、水蒸気が発生しフラスコ内の空気は追い出され水蒸気だけになります。

火を止め、フラスコにピペット(俗称スポイト)を刺したゴム栓をはめ込むのですが、このゴム栓はこんな感じに作ってあります。

これをフラスコにこんな感じにセットします。

フラスコ内の温度が下がっていくと、内部の水蒸気は凝縮して液体の水になっていくので、フラスコ内部の気圧が下がっていくことになります。(フラスコ内の気体分子が減っていくから)

するとフラスコ内は100℃を下回っているにもかかわらず水が沸騰することになるんですが、これを減圧沸騰と呼んでいます。

フラスコ内の湯から泡が出ていて沸騰している様子が分かるでしょう?

フラスコの内部がいつも水面を押さえつけていた大気圧より低い圧力となるため、100℃を下回る温度でも沸騰できるようになるという訳です。

「高い山の山頂では気圧が低く、100℃にならずにお湯が沸騰する」と聞いたことがあると思いますが、これと同じ理由です。

 ちなみに圧力なべはこの逆で、なべに閉じ込めた水蒸気でなべの内部が高圧になるようにしてあるんです。

こうすると100℃を超えないと水が沸騰出来ないことになり、100℃を超える温度で調理が出来ることになる訳ですね。

 さて、減圧沸騰がしばらく続くと水蒸気が新たに生じるためフラスコ内部の圧力は上昇していきますよね。

すると沸騰が収まっていく訳ですが、フラスコと中の湯は外気にさらされ続けているので冷えていく一方です。

下の2つの写真では、水蒸気の凝縮がより多く起こってきてフラスコ内に水滴が沢山付着してきている状況が分かると思います。

さあ、生じた水蒸気が冷えてまたまた減圧沸騰が起こるより早くフラスコ全体が冷えるとどうなるでしょうか?

フラスコ内部の水蒸気が急激に凝縮すると、内部の圧力も急激に減少します。

ここでピペットのゴム球に着目して下さい!

ゴム球の内部は外の大気に通じているのでゴム球内部は大気圧によって外側に押され続けています。

ここでフラスコ内部つまりゴム球外部の圧力がすごく小さくなったらどうなるでしょう?

ゴム球は内側から押されている力で大きく膨らむことになりますよね?!

ごらんの通り、すごく見栄えのするはっきりとした結果になりました!

この実験はやってみた後で気付いたんですが、とても良く考えられているんですね!

まず、ピペットのゴム球の代わりに普通のゴム風船で実験する例があるんですが、風船は軟弱なのですぐ膨らんでしまって減圧沸騰がしっかりと見られないのではないかと思います。

そして、ピペットのゴム球に隙間なく接続できるのはガラスピペットの本体ですよね?

さらに、ピペット本体とゴム球の接続を確実にするために結束バンドを使っていることも良く考えたと思います!

さて、この実験の全体像と原理は見えたでしょうか?

 最後に問いを1つ書いておきたいと思います。

1辺10センチの正方形つまり100cmの面積にかかる大気圧による力はどれくらいだと思いますか?

答えは次回に!