音楽日記 自分の言葉で書いていきたい!

音楽日記

父が所有していた1954年録音フランチェスカッティのメンデルスゾーン

 自分の生家は、父最初の勤務地の社宅だった長崎県西彼杵郡崎戸町(崎戸島)のアパート4階でした。

自分が生まれた時、そこの一室には電蓄(電気蓄音機つまりレコードプレーヤー)が既に置いてあり、音楽好きだった父は良くレコードをかけていたようです。

赤子のための音楽、クリスマスでかける曲等と一緒に、クラシックのレコードがかなりあることに後になって気付き、自分は中学生の頃からその世界にのめり込んでいきました。

その中の1枚が、このフランチェスカッティ独奏のLP盤でした。

メンデルスゾーンとチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲

バックはミトロプーロス指揮のニューヨークフィル

1954年モノラル録音のコロムビア盤でした。

当時のLPレコードのヴァイオリン協奏曲では、この2曲はゴールデンカップリングで、メンチャイコン等とも呼ばれていました。

 

特にメンデルスゾーンの方は、今でも自分にとって最高の演奏なんです。

この演奏での驚きは、第一にフランチェスカッティのヴァイオリンの音色です。

むせび泣くような独特の艶のある音色、そして音量も常に大きめ、歌い回しも繊細と言うより一筆書きで一気呵成に表現するようなスタイルだと思います。

これだけでも他にない特徴ですが、さらにこの曲としては、テンポが非常に速くダイナミックな演奏の部類に入ると思います。

第1楽章からきわめて情熱的。

カデンツァも第2楽章さえも切羽詰まったような熱を帯びています。

第3楽章でようやくエネルギーが外に解放されるよう!

後で聞いたどの演奏もこの盤とは全く違っていて戸惑うほどでした。

  https://www.youtube.com/watch?v=1czSsjqqPcw

 

 この演奏から自分が思い起こすことは

当時の人たちが活躍していた、父がエネルギッシュに頑張っていた、昭和30年代40年代の世の中の勢い、そして元気で健全な精神。

これらのこととこのような演奏が全く同期していると強く思うんです。

 

このレコードを目の前にしてこの演奏に耳を傾けると、当時のことが鮮やかに蘇ってくるように感じます。

 

 ちょっと話はそれますが、

当時の人たちは、

前を向いて、常に上昇志向で、毎日を明朗に元気に生きていた。

しかも、前のめりのスタイルだったのに、心があったんです。

温かく包み込む優しさがいたるところにありました。

両親家庭はもちろん、地域社会にも。

 

あ、当時の自分は、こんな風には全くと言っていいほど頑張れていませんでした・・・

でも、周りの人たちや社会がそうだったということは、しっかりと心に身体に刻み込まれているんです。

そして、そんな中でも人一倍明るく元気だった父親の笑顔を誇らしく思い出します。

5人家族をグイグイと引っぱって行ってくれた父の姿が蘇ってきます。

 

不思議な気持ちです。

これほど父親に逆らった子は自分だけでしたから。

でも、父がくれた愛情を、疑ったり否定したりするということはあり得ないということも確かです。

明日最後のお別れを言って、父を見送りたいと思っています。 

ホロヴィッツのライヴ「キエフの大きな門」

 ウラディミール・サモイロヴィチ・ホロヴィッツは、

1903年、ウクライナに生まれた大ピアニストです。

ホロヴィッツ編曲、演奏の「ムソルグスキー展覧会の絵」の録音が残っているんですが、これが唖然とするほど凄い!

他に比較するものがないほど素晴らしい生命力に満ち溢れた演奏なんです!!

ホロヴィッツの1951年カーネギーホールでのライヴ録音をぜひ聞いて欲しいと思い、

この録音から「バーバヤガーの小屋、キエフの大きな門」のリンクを貼らせていただきました。

 https://youtu.be/aw6qOVHChLs?t=1307

 

ウクライナの全ての方々、そして国としてのウクライナに、

この曲の終曲「キエフの大きな門」のように、勝利と解放が必ずや訪れますよう、

強く祈っています!

ハンス・ツェンダー指揮のシューマン交響曲第2番(1)

 先週、自分としては驚きの経験がありました。

ヤフオクで入手したブラームスの交響曲全集ですが、予想をはるかに超えて素晴らしい演奏でした!

スタニスワフ・スクロヴァチェフスキー指揮ハレ管弦楽団の演奏のものでした。

奇をてらわず、ていねいにていねいに自分のために音楽してるような演奏。

かと言ってこじんまりまとまってしまっているのではなく、響きにも充分な厚みがあり、充実感たっぷりの内容でした!

特に地味になりがちな第3交響曲が味わい深くしかも力強く仕上がっているのですから、本物の演奏と言っていいと思います!

2つの序曲とハイドン変奏曲も素晴らしかった!

(これは全く自分の感想です! 世評とかどうなのかは知りません)

このブラームスに関しては、いずれ書けるといいのですが、実はこれから書きたいことは別のことなんです。

この演奏に感激して、「そうだ!スクロヴァチェフスキーのシューマンはどうだろう?」と Youtube や Amazon music を使って探してみました。

 

 シューマンの交響曲は演奏が難しいと昔から言われてきました。

その難しさですが、「重厚な響き効果的な響きを引き出す演奏が難しい」というものです。

カラヤンはオーケストラをたっぷり鳴らした録音を残していて、自分が10代の頃はカラヤンのような演奏でないと「シューマンの交響曲は重厚に響かない」と植え付けられていたし、自分でもそう思い込んでいました。

カラヤン指揮の恰幅のいい第4交響曲の演奏はLPレコードでも繰り返し聴いてきました。

シューマンの交響曲を「鳴りっぷりを良くする」ために、元の楽譜に手を加えて演奏する行為は昔からしばしば行われてたようです。

これに関してはマーラーの編曲が有名で「マーラー版」が存在しているんですが、ワインガルトナーやトスカニーニといった大指揮者も独自に楽譜に手を加えていたそうです。

 

 さて、シューマンの4つの交響曲の中で最も地味なのは第2番だと思いますが、するとこの第2番を上手く聴かせるのはより難しいのではないかと思うんです。

そして、自分も充分に馴染んでいなかったのがこの第2番でした。

ということで、スクロヴァチェフスキーの指揮でまず第2交響曲を聴いてみました。

このあと、自分の大好きな第4番、第3番と聴き進んでいこうと思ったんです。

(続く)

 

 この第2交響曲の深々とした素晴らしい第3楽章 Adagio espressivoをぜひ聴いてみて下さい!

クリストフ・エッシェンバッハ指揮の演奏です。

https://www.youtube.com/watch?v=Yvrki7nJIKo&list=PLexwM939sM9boKHCbEl9zRPlEc3thfD-z&index=7

 

PS.題のハンス・ツェンダーについてはまだ書いていません。

ヤフオクで手に入れたいCDはTポイントで!

 廃盤になったCD、流通量が少なかったCD、あまりCDを作っていないと思われる国のCD、時には海賊盤CD・・・

これらはAmazonで探すと沢山見つかります。

さらに原語で検索すると、importCDだけでなく、イギリス、アメリカ、ドイツなどのサイトに行きつくこともあります。

この国外サイトの中で「Deliver to Japan」となっているCDがあれば、購入は比較的容易です。

レアな音源だと、そこまでしないと手に入らない物があるんです。

特に、器楽曲や室内楽とかになると、オーケストラものに比べてとたんに探すのが難しくなります。

 さて、ヤフオクやメルカリでも中古CDを結構楽しく探せます。

こちらは、国内盤CDで流通が少なかった物とか、セット物がバラで出品されていたりとか。

先週、FM放送で耳にした、林光作曲「ギター協奏曲 北の帆船」の室内楽版のCDをヤフオクで入手したんですが、これはカード決済で支払いました。

そんなことをしているうちに、数百円の安くて面白いCDがいくつも見つかりました。

再度支払い方法を見てみると、paypayやTポイントが使えるではありませんか!

嬉しくなって、現在CD6枚ほどの落札に参加しています。

・スクロヴァチェフスキー指揮ハレ管弦楽団の、ブラームス交響曲全4曲

・マッケラス指揮の、シベリウス交響曲第2番

・セルゲイ・スタドレル独奏の、チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲

・ミトロプーロス指揮ニューヨークフィルのショーソン交響曲(1953年録音)

 

凄く楽しみなんですが、とっても大切なことを忘れないようにしないといけません!

「CDが届くけど、支払いは全部Tポイントだからね!」

って、カミさんに伝えておくことです!(笑)

Let it be

 先日、突然テレビ番組の中でビートルズの「Let it be」が流れました。

本当にいいですよね・・・!

生き方の原点を見つめ直させる曲の一つのようにも聴こえます。

そして、歌詞や曲の意味を全く知らなくてもすごくいい音楽だと思いませんか?

この曲のこと何か書こうと思いましたが、やっぱりうまく書けません。

みなさんおなじみですが、オリジナルのリンクを貼っておきます!

 https://www.youtube.com/watch?v=eOXDt1XvHgY

イヴはブリテンの「キャロルの祭典」を聴いて欲しい

 昨年と同じになるんですが、やは今夜はこの曲を紹介したくなるんです。

Benjamin Britten 「A Ceremony of Carols」 

今日は、Youtube のこの演奏を聴いてみて下さい。(本当に残念ながら広告が入ってしまうんですが)

  https://www.youtube.com/watch?v=KSt1Zljnql0

 まさに天から響いてくる歌声。

その声がはるかかなたから近づいてくるんです。

そして、あぁ、こんな音楽があるんだ・・・というような別世界の音楽をいくつも届けてくれます。

そんな中に、意志的な力強さを感じさせる曲もあるんです。(This little Babe)

そして最後は、この歌声ははるかかなたに消えていきます・・・

バルトーク ピアノ協奏曲第3番

 以前紹介したPrimeseatベルリンフィル配信で、バルトークの第3ピアノ協奏曲、それにステンハンマルの第2交響曲がブロムシュテットの指揮で聴けるというので、心待ちにしていました。

昨年、2曲とも48kHz24bit 配信が行われ、バッチリ全曲録音させてもらいました!

どちらの曲も、力で押すような演奏だと台無しになってしまう曲だとすごく思っています。

特にバルトークの方は、死の床にあった作曲者が協力者の応援を得ながら、最後の力を振り絞って書き続けた曲なんです。

このデリケートな陰影に富んだ音楽を、ちょっとでも力任せに演奏して欲しくない!

 バルトークは、息子に次のように手紙に書いています。

 

 私はお前の母さんのためにピアノ協奏曲を書くつもりだ。

長い間計画が宙に浮いていたものだ。

もしこれを彼女が3、4カ所で演奏できたら、私が断った委嘱作1作分くらいのお金にはなるだろう。

 

 この第3協奏曲が、優れたピアニストであった妻への誕生日プレゼントになるように、とも考えていたようです。

この曲の作曲当時のバルトークは、白血病の末期段階を迎えていたのですが、本人が自分の健康状態をどこまで自覚していたかどうかは分かっていない、と言われています。

いや、彼ははっきりと分かっていたと思います。

白血病の辛さは最近の報道でも知られている通りだし、彼が病名を知らされていなかったとしても、死期を感じていなかったとは考えにくいでしょう。

そう推測させる根拠があります。

この曲の草稿には、最後のページに "vége"(ハンガリー語で「おしまい」)と書き込まれているんです。

病の苦しさと闘いながら、「やっとこれで最後だ!」

この曲も、作曲の仕事も、そして自分も ・・・ これで終わりなんだ、と。

スケッチを完成させた夏頃から急速に健康の悪化したバルトークは、

家族や知人の作曲家らに手伝ってもらい、病床で必死にオーケストレーションを続けました。

しかし、完成まであとわずかの9月に病院に担ぎ込まれ、作業は中断したまま、数日後ついに帰らぬ人となってしまうんです。

文字通りの絶筆になってしまいました。(その後、協力者たちによってこの曲は補筆完成されています) 

 

 実は、たった今、Primeseat でこの曲の配信を聴きながら書いています!

前回と同じピアノ独奏はアンドラーシュ・シフ、それにブロムシュテット指揮ベルリンフィルの演奏で、今日の最後のメインはブラームスの第1交響曲なので、前回とは別の演奏会かもしれません。

 バルトークと言うと、いかにも難しくとっつきにくく、またピアノ協奏曲第2番などは過激で攻撃的と言える興奮を煽り立てるような音楽なんです。

そんな音楽を書いてきた人の最後の作品がこんなに simple になるとは・・・

とても同じ人が書いた音楽とは思えない・・・

 

 この曲を紹介する時、自分だったら、「まずは、第1楽章の終わりのところから第2楽章全部を聴いてみて下さい」と言うと思います。 

 https://www.youtube.com

 この曲の第2楽章を、夏の夜に明かりの周りを飛び交うかげろうに例えている評論家がいました。

 

 翌朝には一生を終えるかげろうが、最後の夜に小さいながらに力を振り絞って優雅に飛び回っている。

最後に一瞬の輝きを放って儚く散っていく命・・・

 

自分はこのこじんまりした華やかさと儚さをいつも頭に浮かべてしまいます。

そして、特に、第2楽章の終結部。

こんなシンプルな楽章の、そして最後のたった2つの和音がどうしてこんな表現力を宿しているのでしょうか・・・

 https://www.youtube.com

この自粛期間に繰り返し聞いた音楽

 自分は、この新型コロナウィルス対策自粛期間に、

暗から希望を経て明に至る、ロマン派の典型のような音楽を元気づけに何回も聴いてはいるんですが、

それよりも真っ先に聴こうとした音楽があるんです。

そういう気持ちになった理由の一つは、今回の事件は正に現代特有の問題を内包していると言えると思うからです。

 

 

 ここ数か月で何回も繰り返し聴いたのは、

L・バーンスタインの交響曲第1番「エレミア」と交響曲第2番「不安の時代」です。

自分が大学時代から、最初はLPレコードで何度も聴いた曲です。

 

第1番の標題のエレミアについて

「エレミア」はテーマが古代で現代とずれている? と思われたかもしれませんが、

この内容は普遍的で、正に現代のかかえる問題の核の部分ではないかと感じています。

 

 紀元前7世紀ごろ、ユダ王国は、台頭してきたバビロニアの勢いに恐れをなしていた。

そこで、ユダ国王はエジプトと手を結んで自国の生き残りを図り、だんだんとエホバへの信仰も失っていった。

このとき王を諌めたのがエレミヤであった。

しかし、王はむしろエレミヤ疎んじて殺そうとしたため、彼は身を隠した。

それからしばらくしてバビロニアがユダ王国に侵攻、王国は滅んだ。

エレミヤはこれを神罰だと叫び、今こそ信仰を取り戻して正しい生活を送る時だと説いた。

しかし、誰もエレミヤの言葉に耳を貸す者はなかった。

 

この曲は、そんなエレミヤの生涯を表現した曲と言われています。

自らの予言の通りにバビロニアに侵攻され、荒れ果てた故国を前に、為す術がなかった自身の無力さを嘆くエレミヤ。

「エホバよ、願わくば我らをして汝にかえしたまえ」というエレミヤの絶望が歌われます。

しかし、音楽は、そんなエレミヤの生涯が未来に多くの共感を呼ぶことを暗示して終わります。

 

バーンスタイン自身の指揮による渾身のライブ演奏のリンクを貼っておきました。

彼がベルリン芸術週間にイスラエルフィルを率いて、あのベルリンのフィルハーモニーで熱演した記録です!

説明の箇所から聴けるようにリンクしてありますので、良かったら聴いてみて下さい!

 

第1楽章「予言」

 冒頭

 4’38”あたりからの弦合奏の悲痛な表現。

第2楽章「冒涜」

 冒頭。この楽章だけ単独で吹奏楽などでも演奏されるようです。

 10’44”からのたとえようのない美しい瞬間もあります!

 力感に満ち肯定的に聞こえますが、預言に耳をかさない異教徒の祭礼を描いているようです。

第3楽章「哀歌」

 冒頭。最後の楽章では、旧約聖書の「エレミヤ哀歌」がメゾソプラノ独唱で歌われます。

 16’14”あたり静かな悲しみと嘆き。素晴らしい・・・

 18’33”からも心に染み入ってくるようです。

 20’20”あたりからの叫び。最後のクライマックスです。

 21’38’”あたりから最後までのひっそりとしたシンプルな表現。目を閉じて聴いてみて下さい。

 

特定の宗教のみが救済をもたらすというテーマではないと自分は思っています。

自分には、日本人が大昔から試行錯誤で得てきた生活や心(文化)を見直すべきではないか? がテーマになります。

 

この曲は解決を示す音楽ではないのに、気持ちが沈んで終わるという表現に自分は聞こえないのです。

皆さんはどうだったでしょうか?