最近の日本は「モラル」をめぐってすぐに論争が起きます。
一昔前までは、芸能人の不祥事がここまで叩かれることはありませんでしたが、
今ではタレント生命を左右することもしばしばです。
日常的な言動についても同じことが言えるでしょう。
日本はモラルに対して厳しい社会になったのでしょうか?
国民性というのは長い歴史の中で培われるものですから、
一朝一夕に変わるものではありません。
ひとつ考えられるのは、ネットの普及でいろいろな出来事が容易に可視化されるようになり、
批判が集まりやすくなったことでしょう。
しかしながらタレント生命を脅かす事態になることの説明にはなっていない気がします。
日本人におけるモラルというのは、精神的・内面的なものに直結しているのではないように思われます。
「皆がガマンしているのに、誰かその状況を破ることがモラル違反」
という考え方が強いのではないか?
これは、完全に外部的なものであるとみなすことができるでしょう。
(いわゆる前近代的ムラ社会の掟に近いものと思われます)
この話はお金に対する価値観にも表われています。
日本では、一般的に露骨なお金儲けは良くないこととされていますが、
日本人が本当に金銭というものに対して嫌悪感を持っているわけではないと思います。
国際的な比較調査の中には、
むしろ日本人の方が諸外国の人よりも、
お金を持っている方が幸せなれると考える傾向が強い、という結果もあるくらいですから、
実は、お金が大好きなのです。
お金が大好きであるが故に、
「皆がガマンしているのに、誰かが出し抜いてお金儲けをするのは許せない」
という感情が生まれ、
これが先鋭化されて、お金儲けをタブー視する風潮が出来上がったものと思われます。
国民性というのはそう簡単に変わるものではないと説明しましたが、
昔に比べて、ガマンをしないことに対する批判が強くなっているのだとすると、
それは国民性が変わったのでなく、
一つの理由として、日本の経済的な環境が悪化した可能性について考えるべきなのではないか?
つまり、ガマンを強いられる人の割合が高くなったことで、寛容性が薄れてきたのではないか?
皆に余裕がなく殺気立っている状態ですから、当然、トラブルも起きやすくなります。
国税庁の調査によると、
給与所得者の平均年収は過去20年で12%も下がっており、
一方で厚生年金における保険料負担は逆に約14%から17%に増加しました。
この間、消費税もアップしていますから、労働者が自由に使えるお金は激減しています。
経済的な余裕がなくなっていることも、心理面に大きく影響していることでしょう。
また、働き方改革などを通じて、もっと自由な職場環境を構築できれば、
多くの人の行動を分散させることができます。
行動が分散されれば、皆が一斉に動く必要がなくなりますから、
抜本的な改善にはならなくても、他人との摩擦をある程度、軽減できるでしょう。
他人を批判ばかりしていては、精神衛生上良くないことは明らかです。
できるところから改善していくことが重要なのではないでしょうか?
