音楽日記
クラシック音楽ファンに突きつけられた警鐘 テオドール・クルレンツィス
1972年ギリシャ生まれ。今年48歳になる話題の指揮者、テオドール・クルレンツィス。
もうYoutubeでも彼の演奏を聴くことができます。
一聴した感じでは、アグレッシヴで切れ味鋭い。大音量と小さな音の差が際立つ。
しかし、まだ精緻な表現になっているとは言えないのでは?
自分だって、お行儀のいい綺麗なだけの表現なんて聞きたくもないけれど、
鳥肌が立つような真のエキセントリックな表現とは、もっと深みのあるものだと感じる。
今日、チャイコフスキーの悲愴交響曲全曲を聴いてみた自分の感想です。
でも、彼の言いたいことの本質はその通りだと思うし、これから先、コマーシャリズムに乗らない本当の仕事をしていけるのなら、彼が真の表現者になっていくんだと思います!
今、色々と言われても、時間が真の評価を下すでしょう。
以下、インタビューで彼の語ったことをいくつか紹介してみます。
「僕たちの演奏にはいつも賛否両論の反応があるんだけど、自分たちはどちらかといえば保守的だと考えているんだ。
なぜなら僕たちは、作曲家が何を求めていたか、それを信念を持って追求しているのだから。
今は世の中全体が商業的だから、信念を持たずに仕事をしている人たちが多いんじゃないかな。
だから信念を持って何かをする僕たちが奇妙に映るのかもしれない」
「僕にとって理想的なのは、ムジカエテルナのメンバーたちと一緒に修道院にこもって、朝日が昇るのとともに瞑想しリハーサルをする生活。
そこに、僕たちの音楽を聴きたい人たちだけが聴きにくる。
そして3か月に一度ぐらいは外に出て、僕たちのスピリチュアルを街の人に聴いてもらう。そんなコミュニケーション」
「僕たちのミッションは、まずはスコアに書かれている音を再現すること。
でもそれだけではなく、音楽に書かれているスピリットを表現しなければならない。
残念ながら音楽大学の学生たちが学んでいる99パーセントは、『正確に音を出す』ということ。
そして、『こう弾けばこういう感情に聴こえる』というテクニックだ。
けれども、自分自身がスピリチュアルを持っていなければ、音の本当の意味は伝わらない。
それを自分で感じなければならない」
「僕はミュージック・ラヴァーだからね。いい音楽を聴いてきたよ(笑)。
ロックもかなり聴いた。ヨーロッパ、アメリカ、日本のアンダーグラウンドの音楽には素晴らしいものがたくさんあるんだ。そしてワールド・ミュージック。たとえば1960年代のグアテマラの音楽とかね。
僕はそういう新しい表現にとても興味があったんだけど、そんな率直さが現在のクラシック音楽にはちょっと欠けているんじゃないかな。
見せかけだけの偽物になっているような気がする。
プロフェッショナルな音楽家が、毎日毎日同じようなものを再現してお金をもらう。
結婚式のうわべの祝辞みたいに、何の意味も込められていない。
僕にとってはロックやオルタナティヴ・ミュージックのほうが、偉大なシンフォニー・オーケストラの音楽よりもよっぽど楽しい。
ワールド・ミュージックのミュージシャンたちのほうが、アカデミックな音楽家たちよりも、クラシック音楽に対する理解が深いと思うんだ」
そんなあなたがどうしてクラシックの世界にとどまったのかと問われると、
「もちろんクラシックがベスト・ミュージックだからさ」と即答した。
「そんなの、ジャンキー(麻薬中毒者)に、なぜクスリをやめないんだ?と訊くのと一緒だよ(笑)」
そのうえで、現状のお行儀のいいクラシックに警鐘を鳴らすのだ。
「僕は音楽的な家庭で育つことができた。5歳の頃からセックス・ピストルズを聴き、そしてクラシックの教育も受けた。
とてもオープンに音楽を聴き、理解していたんだ。
でも他の子供とは違って、街で聴かれている音楽と先生が教えてくれる音楽が違うということに気がついた。
その両方を理解することが、僕にとってはとても大きかったと思う。
アカデミーに走ってしまう人は、世間の音楽をあまり経験することがない。
音楽が何を伝えたいのかという生の声を見失ってしまっているように思う」
ウィーンフィルハーモニー・2020ニューイヤーコンサート
今年のウイーンフィルニューイヤーコンサートは、アンドリス・ネルソンスがタクトを振りました。
ネルソンスは、今年41才の新鋭指揮者で、昨年末惜しくも病で急逝したマリス・ヤンソンスと同じラトビア出身です。
今回の演奏ですが、彼のシンフォニーコンサートで強く感じられるアグレッシブな輝きをここでも感じ取ることが出来ました!
ウィンナワルツは伝統的なドイツオーストリアの本拠地の古典音楽ですから、独墺系の昔ながらの演奏スタイルで再現される、又は再現しようとすることが多いでしょう。
しかし、このような音楽にも新風を吹き込む演奏が必要なのではないかと自分は感じています。
もちろん、エキセントリックな、小手先だけの手法では上手くいかないのは当然です。
オーケストラと指揮者が入念なリハーサルを経たあと、本番で、
いかに感興に乗れるか、いかに興奮出来るか、いかに狂気を出せるか、特に指揮者は、最後にこの「輝き」「生命力」をプレイヤーから引き出そうとするのではないでしょうか?
多くのリハーサルを積み、最後は奏者の魂を解放させるということではないでしょうか?
もちろん、演奏はこの要素だけで成り立っている訳ではありませんが、この魂の解放を何より大切にした指揮者を思い出します。
ハンス・クナッパーツブッシュ、シャルル・ミュンシュ、レナード・バーンスタイン、カルロス・クライバー・・・そして最近では、ベルリンフィルのシェフに就任したキリル・ペトレンコ。
ネルソンスからも、そのような方向の演奏を聴きたいと願っています!
ブリテン キャロルの祭典
クリスマス・イヴにまさにピッタリの曲を聴いて欲しいと思います!
ベンジャミン・ブリテンの「キャロルの祭典」という、合唱とソロハープの曲です。
自分は、昔、器楽曲に反して、人の声の音楽が好きではありませんでした。今はもちろん、抵抗なく大好きなんですが。
でも、この曲は聴いたとたん、好きになりました!
そして、それまで自分が聴いたいかなる音楽とも異なっていたし、いつも大好きな情熱あふれる音楽でもありませんでした。
日常から遠く離れた、清らかな別世界に連れていってくれる音楽です。
1. 入堂 Procession
2. 主の降誕を歓迎! Wolcum Yole!
3. そのようなバラはない There is no Rose
4a. あの幼児が That yonge child
4b. 子守り歌 Balulalow
5. 四月の露のように As dew in Aprile
6. この赤子が This little Babe - 聖Robert Southwell, 1595
7. 間奏曲 Interlude - ハープ独奏
8. 凍りつく冬の夜に In Freezing Winter Night - 聖Robert Southwell, 1595
9. 春のキャロル Spring Carol
10. 神に感謝 Deo Gracias
11. 退堂 Recession
Youtubeでは紹介したい演奏が見つかりませんでした。
このニコニコ動画も広告が入っていますが最初だけだと思うんです・・・
そして、画面は見ずに音だけ聴いて下さい。(ちょっと音がボケてますが、うるさいのよりはいいと思います)
https://www.nicovideo.jp/watch/sm6956541
それでは、皆様に良いクリスマスでありますように・・・
夏が行ってしまう前に、紹介したい曲
ここ数日、早朝から涼しかったり、雨が降っていたりです。
日の出が遅くなっているのも、はっきりと分かります。
あれほど暑かった今年の夏も、ゆっくりと去っていこうとしています・・・
今朝林にさしかかると、ヒグラシの静かだけど大勢の合唱が聞こえてきました。ヒグラシって夕方だけじゃないんですよね。
そして雨がポツポツと降ったり止んだり。
その中を傘を差したり閉じたりしながら速足で職場に向かいました。
この空気なら確実に快適なんだけど、やっぱりさみしい・・・
自分は、スピードウォーキングの時、人通りがまばらな時間ならYoutube その他を使って音楽を小さい音で聞いています。
イヤフォンは使わず、腰ポケットのスマホから聞こえてくる小さな音を聞きます。
馴染んでいる曲なら、途切れ途切れに聞こえるだけでも音楽を追っていけるんです。
今年の夏が行ってしまう前に、若々しく、とびっきり情熱的なワンシーンを紹介したいと思います。
マーラーの交響曲第1番「巨人」の、第4楽章開始からちょっと過ぎた部分です。
39 ′ 27 ″ からのところです!
長い長い呼吸の盛り上がり!
そして 41 ′ 22 ″ ~ 42 ′ 21 ″ のクライマックス!
さらに、そこから43 ′ 06 ″ まで長い時間をかけてゆっくりとゆっくりと波が引いていく部分!
馴染んだら、目を閉じて音だけに集中して聴いて欲しいんです。
若々しく素晴らしく、いつ聴いてもとても熱い音楽だと感じます!!
・・・ この部分のあとは、劇的な音楽が展開されていきます!
最後に、フィナーレの凄い熱狂をどうぞ!!
53 ′ 00 ″ から聴いて下さい!
ヒンデミットの音楽はとっつきにくいけど・・・
ヒンデミットの「画家マチス」をFM放送で久しぶりに聴いて、ヒンデミットの他の曲も聴いてみようと思い立ちました。
自分のCDを探してみたら、弦楽と金管のための演奏会用音楽、ウェーバーの主題による交響的変容、室内音楽第2番、等が見つかりました。
ヒンデミットについて、「ロマン派の次の時代の音楽を造ったが、無調には向かわなかった」とありますが、今までの自分には、まだすんなりと馴染めていなかったんです。
でも、今回改めて聴いてみて、特に、弦楽と金管のための演奏会用音楽、室内音楽第2番には興味が湧き、ピアノ協奏曲の形態である室内音楽第2番は、ちょっと面白さを感じました。
あ、まだ「これ聴いてみて」とか言える段階ではないんですが。
自分は、中学生のころ、馴染みやすい音楽とか馴染みやすいメロディーとかが元々あって、そうでないものは馴染みにくいんだと思っていました。
まあ、このことは少しは当たっているんでしょうか?
でも、そのあと自分なりにですが、大きな発見をしたんです!
それは、全く無意識の間それもかなり長い間に繰り返し聞いた音楽が、自然に自分の中に浸み込んでいるという事実でした!
最初に馴染みにくいと感じた音楽に、無意識のうちに馴染めていたということです!
これは自分にとって凄いことで、驚きでもあったし、とっても嬉しいことでもありました。
あまり意識せずに色んな曲を聴いていけば、多くの未知の曲が自分の中に浸み込んできて、また好きになれるというはっきりとした実感が湧いてきたんです!
でもこれって、特別なことのようですが、実は全く普遍的なことではないでしょうか?
たとえば、ある初対面の人のことを理解しようとしたとします。
意識して短い時間の中でその人のことを知ろうと努力しても、その人と普段同じ時間を普通に過ごしてきた人の方が、はるかにその人のことを深く理解していると思います。
無意識の長い時間を一緒に過ごしてきた家族とか同じ職場の人については、ごく自然に深く理解しているのではないかと思うんです。
特にクラシック音楽(この言い方は好きではないのですが)を難しいとか、とっつきにくいとか思っている人がいたら、一度、無意識に長い時間付き合ってみることを強くお薦めしたいと思います!
そこには、簡単には言い表せない、とても多くの世界が広がっています!
たかが音楽のくせに、決して小綺麗なんかじゃない、激しい情熱も、狂気さえも、この世界の中には表現されていると、はっきりと感じることができるんです!
そうです!
「たかが音楽」なんかじゃないんです!!
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