2020年5月の記事一覧
鉛蓄電池(カーバッテリー)の過充電で硫化水素が発生する?!
新潟県上越市の上信越道で、25日夕方から26日朝まで舗装工事のパトロールをしていた2人が26日、
駐車していた車の中で意識不明で見つかり、死亡が確認されました。
パソコンや回転灯に使うため車内に積まれたバッテリーから異臭がしていたということです。
異臭の原因は硫化水素だったようです。
なぜ、バッテリーから硫化水素が発生するのでしょうか。
高校化学での勉強では、鉛蓄電池の充放電の反応で硫化水素H2Sが発生することは教わりません!
高校化学で学ぶ鉛蓄電池を充電する時に起こる反応は次の通りです。
PbSO4(正極) + PbSO4(負極) + 2H2O → PbO2(正極) + Pb(負極) + 2H2SO4 ・・・①
この反応だけなら硫化水素H2S等の気体は一切発生しません。
この他、通常でも上の図以外に過充電による反応が多少起こっています。
この時水H2Oの電気分解が起こり、気体の水素H2、酸素O2が発生しています。
2H2O → 2H2↑ + O2↑ ・・・②
この時発生する水素に毒性はないものの、空気と共に充満すれば爆発の危険性があります!
過去の経験ですが、父親がスクーターのバッテリーの充電をしている際、自分がショートさせてしまい、バッテリー上部が破裂して壊れてしまったんです。
バッテリー内部の電解液上部の空間に溜まった水素と酸素の混合気(爆鳴気ですね!)に電気火花で引火させてしまった訳ですね。
また、発生する細かい気泡が液面ではじける時、希硫酸の霧も生じることになります。
でも、ここでも硫化水素ガスは発生していません。
調べてみましたが、詳しい反応は見つけられませんでした。
考えられるのは、充電は電気分解であり、電気分解は強制的に酸化還元反応を起こさせる操作です。
上記①の反応だけなら、酸化還元を受けている元素はPbだけですが、
②の反応が起こる時は、酸化還元を受ける元素はH、Oにも及んでいます。
こんな具合で、さらに条件が変化すれば、希硫酸H2SO4中のSが還元されることも考えられます。
H2SO4 → H2S が起こった時、Sの酸化数は+6 → -2 と非常に大きく変化しますが、電気分解なら充分考えられることだと自分は思います。
さて、では、この鉛蓄電池(カーバッテリー)の使用について、通常どのような注意が必要なのでしょうか?
<通常の車載使用では>
充電中は水素ガス、酸素ガス、酸霧(希硫酸)が少量ですが発生しています。
これらの物質によって付近の物が影響を受ける恐れのある場合は特に配慮が必要ですが、
当初から車載されている状態なら、自動車メーカー側で対策がされているので、ほぼ心配は無いと考えられます。
バッテリーからの発生物質は外部へ放出され、また過充電されにくいよう電気的に制御されています。
<特殊な使用状況では要注意!!>
バッテリーが古い、バッテリー液が少ない、過充電する、等の条件によっては、まれに硫化水素が発生します。
今回の死亡事故では、「ソーラーパネルによる過充電」「バッテリーを密閉された室内に設置」といった条件が重なって起こったようです。
特に、特殊な使い方をする場合は、今回の事件を踏まえて充分に注意すべきでしょう。
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