先日のNHK放映内容が頭から離れない K2未踏のライン平出和也と中島健郎の軌跡
2025年7月8日 22時32分
先日6日放映のNHKスペシャルの内容が頭から離れません。
「K2 未踏のライン 平出和也と中島健郎の軌跡」
この、世界でもトップレベルのクライマーの遭難は、昨年の7月27日のことでした。
<野口健 登山家>
K2西壁の登山は、平出さんと中島さんが数年前から温めていたプロジェクトでした。
しかし8000メートル後半のアルパインスタイルの登はんは、前例がない超高難度のものです。
雪のある部分を巧みにつなげてルートを切り開くのが2人の特徴でしたが、
K2西壁は岩が露出した箇所も多く、これまでの登山とは性質が違うという指摘もありました。
取り囲む環境もこれまでと違うように見えました。
平出くんのインスタグラムを見たら、今回の遠征では必ずスポンサー企業の広告めいた写真がついている。
製品だけを撮った写真もある。
生きるか死ぬかの戦いをやっている最中に、ですよ。
生還してから「こういうものを使っていました」とか、さりげなく写るとかならわかりますが、
平出くんらしくないんですよね。
本人の意向というより、取り巻く環境が変わったのではないかと思います。
一方で、中島くんは、今回の出発前に涙を流していたそうなんです。
これから遠征に行く人が泣くというのは、通常はありえない。
事実だとするなら、今回のK2は厳しいと感じていたのだろうと。
番組の中で、中島健郎さんは確かに涙を流していました・・・
このような結果もあり得ることを、中島さんは感じていたに違いないと思うんです。
でも、このようなきわめてハイレベルな挑戦をしようとする人たちは、
「死ぬかもしれない」
と誰もが感じているはずなんです。
もちろん、
「生きて帰ってくるんだ!」
という強い決意を持ちながらだと思うんですが。
中島さんはなぜ涙を流したのか?
素人ながら、失礼な言い方だとは思いますが、あえて想像すると、
死ぬ可能性のある挑戦を選んだことについての、家族に対する強い罪の意識ではないのか?
自分が言うことではないかもしれませんが、
家庭を持つ人間が、死と隣り合わせの挑戦を選択していいはずがありません!
まだ小さいお子さんがいる中島さんの奥様が、言葉少なに声を絞り出しておられました。
自分は、それを直視出来ませんでした・・・
いや!!
中島健郎さんは、こんなことは百も承知だったはずです!
このような挑戦は避けようとしていたかもしれません。
でも、
技術もあり、実績も積み重ねていき、大きな賞も得る。
スポンサーも付き、登山活動やそのペースについても、自由度がどんどん狭められていく・・・
トップクラスの人間が、このような状況から逃げ出せるはずがありませんし、周りもそれを許さない。
今回の企画で無事生還出来たとしても、
次の挑戦はさらに困難なものになる。
死と隣り合わせという状況は、どんどん強くなっていくに違いない・・・
中島さんは、
「家族を持つ人間なのに、危険な挑戦に対して、選択する権利がない」
ということを突き付けられていたように感じるんです。
今更ながらに、難度危険度の高い挑戦に立ち向かう中で、
家族への強い想いが湧き上がってきたんだと思っているんです。
中島さんも、平出さんも、
「生きて帰ってくるんだ!」
と、強く念じていたに違いないと思っているんです。