今のウクライナの人々の気持ちは?
2022年7月5日 19時30分侵攻直後ゼレンスキー氏は、
日本を含む各国でウクライナ支援を求める演説を行い、圧倒的な支持を獲得した。
しかし戦争が長期化する中、ウクライナの人々と諸国家との間には徐々に認識の相違が広がっている。
ウクライナ国民は領土奪還を諦めていない。
6月の世論調査では、
「2月の侵攻後にロシアが掌握したウクライナの領土と引き換えに、ロシアと和平合意を結ぶことは受け入れられない」
とする回答者は89%に達した。
しかし戦況は厳しい。
米政府内には、米国とその同盟国が供与する予定の高性能重兵器をもってしても、ウクライナが全領土を奪還することは難しいとの見方もでてきている。
ゼレンスキー氏も各国の「支援疲れ」を察知しているのだろう。
支援してきた諸国家も苦しい局面だが、
だからこそ最も厳しいウクライナの人々の境遇に想いを馳せ、
国際社会ができること、すべきことを考える局面ではないか。
三牧聖子
同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科准教授
日本の一部コメンテーターや野党指導者は、
ロシアのウクライナ侵攻の長期化に懸念を表明し、一部領土を割譲してでも停戦に至るべきだとの考えを示してきた。
しかし、ゼレンスキー大統領はロシア軍を追い出すための祖国防衛の戦いを続ける決意を示している。
それは、彼の意思だけでなく、ウクライナ国民の強い要求を受けての政治決断になっている。
ウクライナのキーウ国際社会学研究所が5月24日に公表した世論調査では、
侵攻が長期化したり、ウクライナの独立性がさらに脅かされる事態になったりしても、
「領土に関する譲歩を支持しない」と答えた人が82%に上った。
筆者が取材したウクライナの学者も
「たとえ和平と引き換えに領土を割譲しても、ロシアはその後も戦争を継続し、他の領土も占領する」
と述べ、領土割譲を受け入れなかった。
ウクライナ人にとっては、スターリンによって蹂躙された近現代史の禍根もあり、ロシアを全く信用していない。
高橋浩祐
国際ジャーナリスト