2020年2月の記事一覧
クラシック音楽ファンに突きつけられた警鐘 テオドール・クルレンツィス
1972年ギリシャ生まれ。今年48歳になる話題の指揮者、テオドール・クルレンツィス。
もうYoutubeでも彼の演奏を聴くことができます。
一聴した感じでは、アグレッシヴで切れ味鋭い。大音量と小さな音の差が際立つ。
しかし、まだ精緻な表現になっているとは言えないのでは?
自分だって、お行儀のいい綺麗なだけの表現なんて聞きたくもないけれど、
鳥肌が立つような真のエキセントリックな表現とは、もっと深みのあるものだと感じる。
今日、チャイコフスキーの悲愴交響曲全曲を聴いてみた自分の感想です。
でも、彼の言いたいことの本質はその通りだと思うし、これから先、コマーシャリズムに乗らない本当の仕事をしていけるのなら、彼が真の表現者になっていくんだと思います!
今、色々と言われても、時間が真の評価を下すでしょう。
以下、インタビューで彼の語ったことをいくつか紹介してみます。
「僕たちの演奏にはいつも賛否両論の反応があるんだけど、自分たちはどちらかといえば保守的だと考えているんだ。
なぜなら僕たちは、作曲家が何を求めていたか、それを信念を持って追求しているのだから。
今は世の中全体が商業的だから、信念を持たずに仕事をしている人たちが多いんじゃないかな。
だから信念を持って何かをする僕たちが奇妙に映るのかもしれない」
「僕にとって理想的なのは、ムジカエテルナのメンバーたちと一緒に修道院にこもって、朝日が昇るのとともに瞑想しリハーサルをする生活。
そこに、僕たちの音楽を聴きたい人たちだけが聴きにくる。
そして3か月に一度ぐらいは外に出て、僕たちのスピリチュアルを街の人に聴いてもらう。そんなコミュニケーション」
「僕たちのミッションは、まずはスコアに書かれている音を再現すること。
でもそれだけではなく、音楽に書かれているスピリットを表現しなければならない。
残念ながら音楽大学の学生たちが学んでいる99パーセントは、『正確に音を出す』ということ。
そして、『こう弾けばこういう感情に聴こえる』というテクニックだ。
けれども、自分自身がスピリチュアルを持っていなければ、音の本当の意味は伝わらない。
それを自分で感じなければならない」
「僕はミュージック・ラヴァーだからね。いい音楽を聴いてきたよ(笑)。
ロックもかなり聴いた。ヨーロッパ、アメリカ、日本のアンダーグラウンドの音楽には素晴らしいものがたくさんあるんだ。そしてワールド・ミュージック。たとえば1960年代のグアテマラの音楽とかね。
僕はそういう新しい表現にとても興味があったんだけど、そんな率直さが現在のクラシック音楽にはちょっと欠けているんじゃないかな。
見せかけだけの偽物になっているような気がする。
プロフェッショナルな音楽家が、毎日毎日同じようなものを再現してお金をもらう。
結婚式のうわべの祝辞みたいに、何の意味も込められていない。
僕にとってはロックやオルタナティヴ・ミュージックのほうが、偉大なシンフォニー・オーケストラの音楽よりもよっぽど楽しい。
ワールド・ミュージックのミュージシャンたちのほうが、アカデミックな音楽家たちよりも、クラシック音楽に対する理解が深いと思うんだ」
そんなあなたがどうしてクラシックの世界にとどまったのかと問われると、
「もちろんクラシックがベスト・ミュージックだからさ」と即答した。
「そんなの、ジャンキー(麻薬中毒者)に、なぜクスリをやめないんだ?と訊くのと一緒だよ(笑)」
そのうえで、現状のお行儀のいいクラシックに警鐘を鳴らすのだ。
「僕は音楽的な家庭で育つことができた。5歳の頃からセックス・ピストルズを聴き、そしてクラシックの教育も受けた。
とてもオープンに音楽を聴き、理解していたんだ。
でも他の子供とは違って、街で聴かれている音楽と先生が教えてくれる音楽が違うということに気がついた。
その両方を理解することが、僕にとってはとても大きかったと思う。
アカデミーに走ってしまう人は、世間の音楽をあまり経験することがない。
音楽が何を伝えたいのかという生の声を見失ってしまっているように思う」
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