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明日九月九日 重陽(ちょうよう)の節句

 陽数(奇数)の極である九が重なるところからの名で、重九ともいい吉日とされた。

わが国では『日本書紀』天武天皇十四年(六八五年)に文献での初見があり、この宴を重陽節のはじまりとされた。

しかし令制の規定では節日とはされておらず、宴であった。

嵯峨天皇の弘仁期以後、神泉苑に文人を召して詩を賦し宴を行なったことがみられ、淳和天皇の天長八年(八三一年)以後は紫宸殿で行われるようになり、重陽節としての儀は整い、恒例となった。

九日節会ともいう。

その次第は当日天皇が紫宸殿に出御、皇太子以下公卿参入着座、文人賦詩、賜宴、奏舞、詩の披講、賜禄などで『北山抄』二などに詳しい。

平安時代末期になると天皇が出御せず、宜陽殿で臣下に菊酒を賜わるだけの平座の儀が多くなった。

この日邪気を払い長寿を祈念して菊酒を飲む。

杯に菊花を浮かべたもので菊花酒ともいう。

杯に浮かべた菊の花を吹いて飲むしきたりがあった。

菊は九花とも呼ばれて重陽にはつきものである。

のちには酒に菊香を移し、加賀の名物となった。

また前日に菊の花に覆いかぶせた真綿に移した菊花の露で顔やからだを拭うと、不老長寿を保つといわれ、これを菊の綿といい、のちには菊の着綿(きせわた)ともいった。