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明治神宮外苑再開発 イコモス国内委員会が警告への回答を再要請

 計画の是非について議論を呼んでいる東京の明治神宮外苑の再開発について、

ユネスコの諮問機関のイコモスは、ことし9月、

「世界の公園の歴史においても例のない文化的資産」だとして再開発の中止を求め、

「ヘリテージ・アラート」と呼ばれる警告文を都や事業者などに送りました。

これについて、要請していた回答が期限までになかったとして、

イコモスの国内委員会が21日、都庁で会見を開き、

改めて都などに対し、回答を求めたことを明らかにしました。

イコモス側がアラートを出したあと、再要請するのは異例だということです。

具体的に都に対しては、事業の認可につながった環境アセスメントのやり直しを求めています。

会見の中で日本イコモス国内委員会の石川幹子理事は

「正式な回答がないことは、大変遺憾で深刻な事態だと受け止めている。

どうすれば、広大な緑地が継承できるか、みんなで考えていったほうがいいのではないか」

と話していました。

ヘリテージ・アラートに法的な拘束力はなく、これまでに、

事業者は「イコモス独自の認識の下で一方的に発信された」として、

都は「手続きは法令に基づいて適切に行われている」などとして反発しています。

 

<事業者・都> 一方的な発信だ

 明治神宮外苑の再開発を行うのは、

神宮外苑の土地の大部分を所有する明治神宮と、三井不動産、伊藤忠商事、JSC=日本スポーツ振興センターの4つの事業者です。

事業の認可を行うのは東京都で、

環境アセスメントの手続きが終了したことをもって、ことし2月に認可し、3月から建物の解体工事が始まりました。

計画では、神宮球場と秩父宮ラグビー場が位置を変えて建て替えられるほか、

およそ190メートルのビルなど3棟の高層ビルが建設され、

これに伴って3メートル以上の樹木743本が伐採される予定です。

事業者の1つの三井不動産はアラートに対して

「イコモス独自の認識のもとで一方的に発信された」とする見解を示しています。

アラートで再開発について

「イチョウ並木の健全性に決定的な影響を与える」と指摘されたことに対しては

「確実に保全するために必要な計画の見直しに取り組んでいく」などとしています。

また、都は、小池知事が会見で

「かなり一方的な情報しか入っていないのではないか」と述べるなど、

手続きは適切に行われたという考えです。

 

<専門家> 住民への説明の考え方に米との違い

 明治神宮外苑の再開発では高さがおよそ190メートル、185メートル、80メートルに及ぶ3つの高層ビルの建設され、景観が損なわれるなどと疑問の声も上がっています。

これについて、イコモスはヘリテージ・アラートで

「市民などと協議することなく、高層ビルを建設することに強く警告を発する」

などと指摘しました。

一方、事業者の1つの三井不動産は高層ビルの建設が明らかになった2020年以降、

9回にわたって説明会を行ってきたとしています。

 

 こうした両者の食い違いについて、アメリカの都市開発に詳しい東北大学の窪田亜矢教授は、

住民への説明に対して考え方の違いがあることが背景にあると指摘しています。

窪田教授によりますと、アメリカ・ニューヨークでは、

歴史的な価値があると認定されたエリアで景観などを大きく変える再開発計画が立ち上がった場合、

市が専門家などを交えて検討委員会を開き、住民から意見を聞き取ります。

そして、住民の意見を踏まえて計画が妥当かどうか判断することとなり、

これまでには高層ビルの建設計画が中断されたケースもあるということです。

窪田教授は

「ニューヨークでは住民も景観を享受しているとして、その意見を尊重する考えが強い」

と指摘しています。

そのうえで

「日本では説明会を開くだけで住民参加が形骸化しているように見える。

『説明責任』だけじゃなく、住民の意見に応える『応答責任』も求められるべきで、

今はまさに過渡期だと思う」と話していました。