日ごろのこと、何でも!

『寂聴 九十七歳の遺言』より・・・是非読んで!・・・

 若い人があまり恋愛しなくなったと聞きます。

不思議ですね。

どうしてこんな楽しいことに一生無縁でいいのか、もったいないなと思います。

特に今の若い女の子は、若い男の子を男と思っていないのではないかしら。だから好きになれないのかもしれません。

 でもね、人間は生きていて、誰かを愛する経験をした方が、生きてきた感じが切実にわかるのです。

ところが、最近の若い人は傷つくのが嫌だと言います。

 青春は恋と革命です。それは失敗や死をも怖れない情熱の発露でしょう。

 私が九十一歳の時、千葉県の幕張メッセで、一万五千人くらいの若者たちを前に、夜九時くらいから法話をしたことがあります。

各ブースでロックコンサートやトークショーが行われる、東日本大震災のチャリティーを兼ねたオールナイトイベントでした。

 会場のすごい熱気に私も興奮して、開口一番、「青春は恋と革命だ!」って叫びました。

そうしたら「ウワーッ!!!!!」と大歓声。

やはり最近の若い人にも、それに憧れるような情熱があるんです。

誰かが少し背中を押してあげたらいいと思いますね。

 情熱に身を任せて何でもやってみたらいいじゃないですか。

傷ついて別れたっていいんです。

 別れる辛さを身に染みて覚えたら、もしかしたら、素晴らしい詩や小説が出来るかもしれない。

これ以上の楽しい恋愛はないということを経験した人でも、それはそれで何のかたちで表現したくなるでしょう。

 百冊の本を読むよりも一度の真剣な恋愛の方が、はるかに人間の心を、人生を豊かにします。

経験者は語る、間違いありません。

 もしかしたら、今の若者たちは自分のことが嫌いなのかもしれない。

自分でさえ好きになれないそんな人間を、いったい誰が好きになってくれるでしょうか。

自分を愛せない人は、人を愛することも出来ません。

そうだとしたら、まずは自分を愛することから始めないといけないでしょうね。

自分を魅力的な人間に鍛えなければなりません。

若い人だけじゃない。四十代、五十代になると、恋愛なんてもう出来ないと思いこむ人が多いようです。

それは、ほんとに好きな人とめぐりあっていないだけ。

いくつになっても気になる人がでてきます。

 誰かを好きになるというのは理屈ではない。

あの人の顔がいいから好きとかお尻のかたちがいいから好きとか、そんなことは後で言うことで、好きになることに理由はありません。

 恋は雷に打たれたようなものなんです。

 何か理由があって好きなのはほんとの恋愛じゃないと思います。

何かわけがわからないけれど好きになる。

恋愛なんてそんなものです。

 人間は誰かを愛するために生まれてきたのです。

誰も愛さないで死んでいくことは、せっかく生きてきたのに惜しいことだと思います。

 もちろん、愛したらいろんな苦しみがともないます。

けれどもその苦しみを味わわないと、人間の真のやさしさとか想像力とか、本来的に人間に備わっている素晴らしい力が表に出てこないのではないでしょうか。

 愛した人が一人もいないなんて、それだったら生まれてこない方がいいとさえ思います。

生まれてきた以上は、やはり好きな人にめぐりあって愛しあった方がいいに決まっています。

 もしかしたら、今の四十代、五十代も自分を愛することが出来なくなっているのでしょうか。

自信を失うと、人は誰かを愛することが出来なくなるものです。

(『寂聴 九十七歳の遺言』から引用させていただきました)

 

瀬戸内寂聴さん! 凄い! 良く言葉にしてくれました!

寂聴さんはとてもとても人間らしい方だと思うし、自分もそうだと強く思っています!