タラス・ブーリバ、マテオ・ファルコーネ
ベルリンでも例にもれず、通常の演奏会は中止になっていて、無観客演奏の配信を行っているようです。
先日、キリル・ペトレンコの指揮でマーラーの第4交響曲(室内編成版)がデジタルコンサートホールで配信されていました。
毎週土曜日には、Webでベルリンフィルアワーという高音質配信をやってくれるんですが、
前回のアーカイブの配信では、チェコのヤクブ・フルシャが指揮したヤナーチェクの狂詩曲「タラスブーリバ」を聴くことが出来ました。
自分はLPレコード時代からこの曲が大好きでした。
コサック出身のタラスブーリバの物語が標題になっています。
タラスの次男アンドレイは敵方の女性に恋してしまい、その女性を救い出すために敵国ポーランド軍に加担してしまう。
そして自分の寝返りを知った父親と接戦し、父の手にかかり落命してしまう。
長男オスタップは、弟アンドレイの死に悲嘆するうちに戦場でポーランド軍の捕虜になってしまう。
タラスブーリバは変装してポーランドに潜入するが、拷問されている息子の最期を目の当たりにし、息子に向かって思わず叫ぶ。父の叫びと同時に息子は命を絶たれてしてしまう。
ポーランドを脱出したタラスブーリバは、死に物狂いでポーランド中を転々と弔い合戦する。
しかしついにタラスブーリバは捕らえられてしまう。
ポーランド軍によってタラスが火刑に処される中、「ロシア人の信仰心と魂は決して滅びることはない!」と叫び絶命する・・・
終曲はタラスブーリバの雄叫びの声にあふれているが、最終部は静かなパッセージがタラスブーリバの捕縛を描写する。
彼の最後の叫びは金管楽器とオルガンの煽情的なパッセージで描写され、鳴り響く鐘と誇らしげなエピローグによって曲は閉じられる。
この感動的なヤナーチェクの曲については、別の機会にまた紹介したいと思います!
久しぶりにこの曲と内容の感慨にふけっているうちに、はっと思い出した物語があります。
小学校時代に読んだメリメの短編小説「マテオファルコーネ」です。
短い中に、これ以上ない強烈なラストシーンが描かれています。
これが、学研の少年少女世界文学全集の中に入っていたんです・・・!
或る日、マテオファルコーネは妻と仕事に出かけ、10歳の息子フォルチュナトが留守番に残されました。
そこにお尋ね者が憲兵に追われて逃げてきました。
かくまってくれと頼まれたフォルチュナトは、お尋ね者を干し草の中に隠してやります。
そこに憲兵たちが追いついて来て、犯人はどこだと問い詰めます。
しかし、フォルチュナトは脅しには少しも動じません。
そこで憲兵の曹長は、高価な銀時計を見せてフォルチュナトを買収しようとします。
まだ10歳のフォルチュナトはその銀時計が欲しくてたまらず、とうとうお尋ね者の隠れ場所を教えてしまいます。
帰って来たマテオファルコーネは、息子の持っている銀時計を見て全てを悟ります。
そして妻に「おい、この子は俺の子か?!」と尋ねます。
マテオは息子を近くの空き地に連れて行き、大きな穴を掘らせ、その後お祈りをしろと言います。
息子は知っている限りのお祈りをします。
そして、父親に許しを請い嘆願します。
「お父さん! ごめんなさい! 殺さないで!」
マテオは息子に目を閉じて手を合わせるように命じ、自分は十字を切ります。
息子に銃口を向け「神のご加護がありますように・・・」とつぶやきます。
フォルチュナトはあらん限りの力を振り絞って父親の足元に突進します。
銃口が火を噴き、フォルチュナトは動かなくなります・・・
即死でした・・・
この物語を思い出してから、数日この内容が頭から離れません。
そして、この年になってからの自分の想いは、やはり昔とは違っていました。
今度、その自分の想いを書いてみようと思っています。
(自分が昔読んだ時の挿絵はまさにこれでした・・・!)
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