SL(蒸気機関車)のこと
ついこの間、職場で、
質量はmass(マス)というんだけど、マッシブ(重々しい)という言葉は聞いたことある? という話になりました。
そして、大きな重々しい、たとえば機関車とかが近づいてきたら、音や振動や動きに圧倒されたりして感動しない? と聞いてみたんです。
気持ちを込めて一生懸命に話したんですが、「興味な~い」だって・・・!
今の若者はヴァーチャル体験世代だし、ヴァーチャルが一番面白くてすごくて楽しくてしかもお手軽で ・・・ と思ってるでしょうからね ・・・
でも、この状況はかなり心配なことだと、自分は危機的なものを感じているんです!
ほとんどがヴァーチャル体験という現在の状況が、
人間の感覚だけでなく、心までそして身体さえも蝕んでいるという、予想もできなかった結果を実際に生んでしまっていますよね?!
自分は、特に鉄道が大好きでしたが、
また、音楽だけでなく音自体にもすごく関心があったんです。
昔、自分が書いたクラス通信にこんなことを書いたのを思い出したので、ちょっと読んでみて下さい。
SLの話
最近、SL(蒸気機関車)に時々出会います。(この近くでは、秩父鉄道やJR上越線など)
自分も最近はSLにとても感動して、ジーンときてしまうんです。
自分の小学校時代は、家(九州)のそばを良くD51(デゴイチと呼んだ)が走っていて、その頃は「ディーゼル機関車DLや電気機関車ELの方がずっとカッコイイ」と思っていました。
実際、力はDLやELの方がずっと強くて、今回見たC58は1300馬力ぐらいですが、八高線を走るDD51は2000馬力、ブルートレインを牽引するEF66は5300馬力もあります。
でもみなさん、SLの方がずっと力強く感じませんか? 一生懸命仕事しているように見えませんか?
汽笛にしても、大きな豊かな情緒ある音ですよね。DLやELの汽笛なんて淋しい音です。(近所迷惑にならないように?)
なぜこんな話を書くのかというと、SLに感動しているのはマニアだけではないと思うからです。
なぜ多くの人たちがSLに惹かれるのでしょうか?
SLのメカ的な力強さはもちろんのことですが、自分は、「合理化して失ってしまったもの」が、SLはもちろん、SLの動作にもギッシリとつまっているからではないか? と思っているんです。
大きな1メートル以上もある動輪。それを回す長いクランクシャフトが音をたてて大きく往復運動している。
それに連動してたくさんの真っ白い蒸気や、ある時は真っ黒い石炭の煙が煙突から噴き出してくる。
そして大きな鉄のかたまりがぶつかったり、きしみあったりする音がリズミックにダイナミックに響く。
時々、谷間にどこまでもこだましていくような力強い汽笛が響きわたる。
SL自身を動かすのは、たくさんの石炭とたくさんの水。これらをいちいち補給しなければなりません。
石炭は固体だから積み込むのも大変。また、石炭は大量の煙と灰になります。
エネルギー効率もかなり悪いんです。
運転手もとても重労働です。大食いのSLに石炭をどんどん食べさせてやらないといけません。スコップで石炭を始終投げ入れてやっています。
運転席も夏は暑く、冬は寒そうです。メンテナンスだってとても大変そうです。
こうやって精一杯動いているSLは、一生懸命元気にがんばっている人間のようにも見えます。生きているようにも見えるんです。
このような「今は合理化されて失ってしまった、情緒のようなもの」がSLにはいっぱい詰まっているように思います。
そしてSLは、それを設計したエンジニアたちも作った人たちも、思い入れというか愛情というか、そんな気持ちを込めて作り上げられていったのではないかと思うんです。
見ている人はそんな事も感じているはずです。
このせわしない合理化されてしまった現代に、そのような物があるでしょうか?
そのような生活があるでしょうか?
SLを見ているといろいろな事を感じます。いろいろな事を考えます。皆さんにもぜひ見て欲しいと思います。
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