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かにむかし(2)

 この「かにむかし」を思い出したきっかけは、直売所で青い(緑の?)柿に出会ったことでした。

この柿は甘くてびっくりしたんですが、食べている時にふと、さるかに合戦の一場面を思い出したんです。

さるがかにに投げつけたのは「青い柿じゃなかったっけ?」と。

自分が馴染んでいたのは「かにむかし」という話だったんですが、この内容をちょっと紹介しようと思います。

60年以上も前に発刊されたこの絵本は、何と現在もまだ出版されているようなので、一部だけの紹介にとどめたいと思います。

途中があちこち抜けていますが、皆さんお馴染みの話だと思うので、内容を補完しながら読んでみて下さい。

この小気味よいテンポと擬態語がとても心地良く感じるんですが、特に最後のクライマックスがすごく爽快なんです。

でも、このキモの部分は書いちゃいけないんでしょうね・・・

ああ、それから、

さるは「へしゃげてしもうた」とあるんですが、死んでしまったとは書かれてないんですよね。

 

 むかしむかし、かにがしおくみをしようとおもうて、はまべへ出たところが、

すなのうえに、どこからどうしてきたもんだか、ひとつぶのかきのたねがおちておった。

「こらあええもんがあった。いっちょうちのにわにまいてみよう」

 

 

 かにはさあこんどこそは、しまいだ、とおもうて、まいにちみずやこやしをやりながら、

「はよううれろ、かきのみ、うれんと、はさみでもぎりきるぞ」

というておったら、

かきのみはここまできてもぎりきられてはかなわん、とおもうて、いっせいにあわててまっかにうれだしたけれども、

なかにはまにあわんで、まだあおいところがのこったなりで、すましてさがってゆれておるのもあった。

 

 

 

さるは、なんのこともないかおで、

「よし、そんならおらがもいでやろうか」

というたがはやいか、

かきの木のてっぺんへかけのぼって、

まっかにうれたおおきなかきを、目にもとまらんようにつぎつぎにくいはじめた。

 

「やあい、いっちょぐらい、こら、もいでよこさんか、おおい」

というたら、さるは、

「なんだ、よし、ほれ」

と、まだあおいかおをしておもたそうにゆれておったおおきなかきを、いきなりひんもいで、びゅーんとなげつけた。

するとそのかきはかにのこうらにどすんとあたって、

かにはべしゃりとつぶれてしもうた。

 

 

 そうしてみんながひとつずつきびだんごをこしにつけて、

みんなそろうておやがにのあだうちに、

さるのばんばというてさるがすんでおるところへ、

いよいよでかけることになった。

そこでおおぜいのこがにどもが、うちそろうて、がしゃがしゃがしゃがしゃあるいてゆくと、

まず、ぱんぱんぐりにゆきおうた。

ぱんぱんぐりがいうには、

「かにどんかにどんどこへゆく」

そこで こがにがこえをそろえて

「さるのばんばへあだうちに」

「こしにつけとるのは、そらなんだ」

「にっぽんいちのきびだんご」

「いっちょくだはり、なかまになろう」

「なかまになるならやろうたい」

というて、ぱんぱんぐりにきびだんごをいっちょやって、ぱんぱんぐりはなかまになった。

 

しまいにおおきな石うすがごろりごろりところんできて、

こがにとあのもんどうをして、石うすもなかまになった。

そこでますますおおさわぎになって、

がしゃがしゃがしゃがしゃ、ころころ、ぶんぶん、ぺたりぺたり、とんとん、ごろりごろりというさわぎになって、

みんなはさるのばんばにちかづいた。

 

みんながさるのばんばについて、なかをのぞいてみると、

さるはちょうど出かけてるすであった。

 

 みんなじぶんじぶんでそれぞれおうたところにしずまりかえって、うんときばってまっておると、

さるはどこかから、ひょいひょいととんでもどってきて、

「ああ、さむかさむか」

といいながら、いろりのふちへちょんととまってせなかをあぶっておった。

すると・・・

 

さるはもうなにもわからんようになって、

とぐちをひとあしとびだしたところが、

そこにたってまっておったはぜぼうにあしがひっからまって、

はちにさされたあたまをはぜぼうがごつうんとぶったとおもうたときには、

うえから・・・

 

おおきな石うすがどしーんとおちてきて、

さるはひらとうへしゃげてしもうたそうな。