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2021年4月の記事一覧

シンプルだけど良く考えられた実験(詳細)

 前回ざっと書いたこの実験について、原理も含めて記録しておきたいと思います。

フラスコ内の水をしばらくの間沸騰させると、水蒸気が発生しフラスコ内の空気は追い出され水蒸気だけになります。

火を止め、フラスコにピペット(俗称スポイト)を刺したゴム栓をはめ込むのですが、このゴム栓はこんな感じに作ってあります。

これをフラスコにこんな感じにセットします。

フラスコ内の温度が下がっていくと、内部の水蒸気は凝縮して液体の水になっていくので、フラスコ内部の気圧が下がっていくことになります。(フラスコ内の気体分子が減っていくから)

するとフラスコ内は100℃を下回っているにもかかわらず水が沸騰することになるんですが、これを減圧沸騰と呼んでいます。

フラスコ内の湯から泡が出ていて沸騰している様子が分かるでしょう?

フラスコの内部がいつも水面を押さえつけていた大気圧より低い圧力となるため、100℃を下回る温度でも沸騰できるようになるという訳です。

「高い山の山頂では気圧が低く、100℃にならずにお湯が沸騰する」と聞いたことがあると思いますが、これと同じ理由です。

 ちなみに圧力なべはこの逆で、なべに閉じ込めた水蒸気でなべの内部が高圧になるようにしてあるんです。

こうすると100℃を超えないと水が沸騰出来ないことになり、100℃を超える温度で調理が出来ることになる訳ですね。

 さて、減圧沸騰がしばらく続くと水蒸気が新たに生じるためフラスコ内部の圧力は上昇していきますよね。

すると沸騰が収まっていく訳ですが、フラスコと中の湯は外気にさらされ続けているので冷えていく一方です。

下の2つの写真では、水蒸気の凝縮がより多く起こってきてフラスコ内に水滴が沢山付着してきている状況が分かると思います。

さあ、生じた水蒸気が冷えてまたまた減圧沸騰が起こるより早くフラスコ全体が冷えるとどうなるでしょうか?

フラスコ内部の水蒸気が急激に凝縮すると、内部の圧力も急激に減少します。

ここでピペットのゴム球に着目して下さい!

ゴム球の内部は外の大気に通じているのでゴム球内部は大気圧によって外側に押され続けています。

ここでフラスコ内部つまりゴム球外部の圧力がすごく小さくなったらどうなるでしょう?

ゴム球は内側から押されている力で大きく膨らむことになりますよね?!

ごらんの通り、すごく見栄えのするはっきりとした結果になりました!

この実験はやってみた後で気付いたんですが、とても良く考えられているんですね!

まず、ピペットのゴム球の代わりに普通のゴム風船で実験する例があるんですが、風船は軟弱なのですぐ膨らんでしまって減圧沸騰がしっかりと見られないのではないかと思います。

そして、ピペットのゴム球に隙間なく接続できるのはガラスピペットの本体ですよね?

さらに、ピペット本体とゴム球の接続を確実にするために結束バンドを使っていることも良く考えたと思います!

さて、この実験の全体像と原理は見えたでしょうか?

 最後に問いを1つ書いておきたいと思います。

1辺10センチの正方形つまり100cmの面積にかかる大気圧による力はどれくらいだと思いますか?

答えは次回に!

シンプルだけど良く考えられた実験

 まずフラスコ内の水を沸騰させます。

火を止め、ピペットを付けたゴム栓をはめます。

放置して冷やすと、少し間をおいて減圧沸騰が始まります。

そして、さらにフラスコを冷やすと、最終的には・・・

さて、こうなる理由は・・・?

CO2排出削減の救世主的技術、二酸化炭素そのものを回収する方法!

 すでに大気中に排出されてしまった二酸化炭素CO2、あるいは、これからもまだ排出されるであろうCO2そのものを、どのように除去したらいいのでしょうか?

その最先端技術の紹介です。

 

自然界における二酸化炭素循環

 人類が化石燃料を使う前、地球上においてCO2は基本的に水や酸素と同様に、増えもせず減りもせず、うまく循環していたはずです。

地球化学的循環は数百万年オーダーの変動で、大気中のCO2は水に溶け、やがて炭酸カルシウム(CaCO3)となって固体になり、火山の爆発によりCO2が大気中に出て、また水に吸収されるという循環サイクルが完成します。

生物学的循環は数万年オーダーの変動で、植物は大気中のCO2と水から光合成によりデンプンやセルロースを生成。

この時に酸素が発生し、動物は酸素を吸ってCO2を吐いています。このように、CO2や酸素はバランスよく循環しています。

これが自然の摂理です。

さて、人為的CO2排出ですが、人類最初の化学反応は火を使った燃焼でした。

人類は、火を使って木や草を燃焼させエネルギーを獲得してきました。

木や草は炭素を骨格とした有機化合物からできていますので、燃やせばCO2が発生します。

この燃焼という化学反応は現在でも行われており、重要なエネルギー獲得手段になっているのは周知の通りです。

そして人類は、有機化合物からできている石炭・石油・天然ガスといった化石燃料を大量に燃やし、地球化学的循環や生物学的循環に比べて微々たる短期間、過去200年の間に、一方的に大量のCO2を排出してきました。

この人為的に排出されたCO2はリサイクルされておらず、CO2は大気中に溜まる一方です。

では、CO2はどのように削減すればいいのでしょうか。

 

二酸化炭素そのものを直接回収するには

 今注目を集めているのは、化石燃料をできるだけ使わない、あるいは再生エネルギーの活用などの間接的削減といったことではなく、CO2そのものを直接回収して削減する技術です!

この技術は、ダイレクトエアキャプチャー(DAC)と呼ばれますが、経済や社会活動に制約を与えることなく、CO2だけを削減することができる温室効果ガス削減の救世主的方法と言えるでしょう。

以下、いくつかの研究・開発例を紹介します。

 

<神戸学院大学・稲垣教授考案>

 アンモニア(NH3)など窒素原子を含む化合物であるアミン類がCO2を吸収することは周知の事実ですが、一緒に水を吸収してしまう欠点がありました。

しかし最近、メタキシリレンジアミンを用いると、この欠点を克服できることが見出されました。

吸収されたCO2を取り出すためには一般的には高温が必要ですが、この場合にはCO2吸収後、比較的低温の120℃でCO2を放出しますので、早期の実用化が望まれます。

 

<公益財団法人 地球環境産業技術研究機構考案>

 CO2を吸収する化学吸収液(2ーイソプロピルアミノエタノール水溶液にピペラジン誘導体やエタノールアミン誘導体を含むもの)や、固体吸収材(多孔質のシリカゲルにアミンを担持させたもの)を開発しています。

こうしたCO2を化学的に吸収する方法の開発は重要です。

 

<日本CCS調査株式会社考案>

 現在、日本CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)調査が、苫小牧沖の海底1000m以上の深さにある隙間の多い砂岩などからできている貯留層に、製油所から排出されるCO2を大気放出前に回収(活性アミンプロセス)して貯留する実証プラントを稼働させています。

かなり大掛かりな施設ですが、こちらも実用化が期待されます。

 

<JFEエンジニアリング株式会社考案>

 清掃工場から排出される排ガスからCO2を回収して利用するCCU(Carbon Capture and Utilization、二酸化炭素回収利用)プロセスの実証実験を開始すると発表しました。

このプラントのCO2吸収方法も、天然ガスプラント建設等で実績のあるアミン吸収法です。

CO2回収を清掃工場に適用すると、ごみに含まれるバイオマス分を合わせた「ネガティブカーボン(CO2回収量>排出量)」を達成することが可能になります。

 

<日揮株式会社考案>

 セラミック製のゼオライト膜を活用したCO2分離・回収技術の実証試験を米国テキサス州で開始しています。

日本ガイシと共同開発したゼオライト膜は1ナノメートル以下の微細な穴を多く持つのが特長で、ちょうどCO2を通す大きさなので、原油生産時に出てくるメタンなど他のガスから分離することができます。