NHKラジオ文芸館 春の狐憑き
2026年4月2日 21時51分
NHKラジオ文芸館で、千早茜の短編小説「春の狐憑き」を聴いた。
思わず引き込まれてしまった。
散歩しながら聞いたので、所々聞き逃してしまった。
家に戻ってから、らじるらじるの聞き逃し配信で再び最初から聴いた。
狐憑きと言うと一般的には、狐の霊に取り憑かれた精神の錯乱した人といった意味なのだけど、
この物語では、悩める迷える主人公に、狐の霊が宿った老人尾崎が優しく人間本来の生き方を示し、主人公を立ち直らせるきっかけを与える、といった内容だと感じた。
自分が若い時通った辛い時期を思い出させ、そして、人としての本来の生き方について考えさせてくれた。
現代の、決して幸せではない生活、それも身の周りに当たり前のように満ちているこれらのことへの警鐘にも聞こえた。
ちょっと、一部を紹介させて下さい。
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私は人と関わるのが怖い。
諦めることで逃げている。
分かっているけど、恐怖が勝っている。ずっと。
ねえ尾崎さん、あなたは怖くないのですか?
いつもそんなおかしなことばかり嬉しそうに話して、
そんなに自然体で開けっぴろげで、てらいが無くて、
素の自分をさらけ出して、誰かに拒絶されたり誤解されたりするのが恐ろしくないんですか?
私は怖い。
人に心を許したり、頼りにしたり、惹かれたり、そういう何もかもが怖くてたまらない。
何か勝手に思われたり、幻滅されたり、嫌われたり、裏切られたりするのが怖い。
自分を否定されたら、どうやって立っていていいのか分からなくなる。
それだったら一人がいい。
何も変わらず、すり減ることもない。
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・・・
今の人たちはあまり健全ではないのですか?
ええ、人であって人でない人が増えているのですよ。
機械が作ったものばかり食べていたり、
自分の周りの自然を感じられなかったり、
周りに流されてばかりで、自分の内なる声をきちんと感じ取って生きていないと、
生き物としての正気は保てません。
そうなると、見た目は人でも、中身はもう人の形を保てなくなります。
つきものと違って、こちらはひどく直しにくいのです。
自分自身が病の元なのですから。
しかも、やっかいなのは、
人は人で無くなってしまっても、生きることの出来る場所が保証されている点です。
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目先の善悪にとらわれてはいけません。
すぐに出る答えになんかたいした価値はないのですよ。
答えなんか無い方があたり前なんですから。
ほんとはね。
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