音楽日記
この自粛期間に繰り返し聞いた音楽
自分は、この新型コロナウィルス対策自粛期間に、
暗から希望を経て明に至る、ロマン派の典型のような音楽を元気づけに何回も聴いてはいるんですが、
それよりも真っ先に聴こうとした音楽があるんです。
そういう気持ちになった理由の一つは、今回の事件は正に現代特有の問題を内包していると言えると思うからです。
ここ数か月で何回も繰り返し聴いたのは、
L・バーンスタインの交響曲第1番「エレミア」と交響曲第2番「不安の時代」です。
自分が大学時代から、最初はLPレコードで何度も聴いた曲です。
第1番の標題のエレミアについて
「エレミア」はテーマが古代で現代とずれている? と思われたかもしれませんが、
この内容は普遍的で、正に現代のかかえる問題の核の部分ではないかと感じています。
紀元前7世紀ごろ、ユダ王国は、台頭してきたバビロニアの勢いに恐れをなしていた。
そこで、ユダ国王はエジプトと手を結んで自国の生き残りを図り、だんだんとエホバへの信仰も失っていった。
このとき王を諌めたのがエレミヤであった。
しかし、王はむしろエレミヤ疎んじて殺そうとしたため、彼は身を隠した。
それからしばらくしてバビロニアがユダ王国に侵攻、王国は滅んだ。
エレミヤはこれを神罰だと叫び、今こそ信仰を取り戻して正しい生活を送る時だと説いた。
しかし、誰もエレミヤの言葉に耳を貸す者はなかった。
この曲は、そんなエレミヤの生涯を表現した曲と言われています。
自らの予言の通りにバビロニアに侵攻され、荒れ果てた故国を前に、為す術がなかった自身の無力さを嘆くエレミヤ。
「エホバよ、願わくば我らをして汝にかえしたまえ」というエレミヤの絶望が歌われます。
しかし、音楽は、そんなエレミヤの生涯が未来に多くの共感を呼ぶことを暗示して終わります。
バーンスタイン自身の指揮による渾身のライブ演奏のリンクを貼っておきました。
彼がベルリン芸術週間にイスラエルフィルを率いて、あのベルリンのフィルハーモニーで熱演した記録です!
説明の箇所から聴けるようにリンクしてありますので、良かったら聴いてみて下さい!
第1楽章「予言」
第2楽章「冒涜」
力感に満ち肯定的に聞こえますが、預言に耳をかさない異教徒の祭礼を描いているようです。
第3楽章「哀歌」
冒頭。最後の楽章では、旧約聖書の「エレミヤ哀歌」がメゾソプラノ独唱で歌われます。
21’38’”あたりから最後までのひっそりとしたシンプルな表現。目を閉じて聴いてみて下さい。
特定の宗教のみが救済をもたらすというテーマではないと自分は思っています。
自分には、日本人が大昔から試行錯誤で得てきた生活や心(文化)を見直すべきではないか? がテーマになります。
この曲は解決を示す音楽ではないのに、気持ちが沈んで終わるという表現に自分は聞こえないのです。
皆さんはどうだったでしょうか?
クラシック音楽ファンに突きつけられた警鐘 テオドール・クルレンツィス
1972年ギリシャ生まれ。今年48歳になる話題の指揮者、テオドール・クルレンツィス。
もうYoutubeでも彼の演奏を聴くことができます。
一聴した感じでは、アグレッシヴで切れ味鋭い。大音量と小さな音の差が際立つ。
しかし、まだ精緻な表現になっているとは言えないのでは?
自分だって、お行儀のいい綺麗なだけの表現なんて聞きたくもないけれど、
鳥肌が立つような真のエキセントリックな表現とは、もっと深みのあるものだと感じる。
今日、チャイコフスキーの悲愴交響曲全曲を聴いてみた自分の感想です。
でも、彼の言いたいことの本質はその通りだと思うし、これから先、コマーシャリズムに乗らない本当の仕事をしていけるのなら、彼が真の表現者になっていくんだと思います!
今、色々と言われても、時間が真の評価を下すでしょう。
以下、インタビューで彼の語ったことをいくつか紹介してみます。
「僕たちの演奏にはいつも賛否両論の反応があるんだけど、自分たちはどちらかといえば保守的だと考えているんだ。
なぜなら僕たちは、作曲家が何を求めていたか、それを信念を持って追求しているのだから。
今は世の中全体が商業的だから、信念を持たずに仕事をしている人たちが多いんじゃないかな。
だから信念を持って何かをする僕たちが奇妙に映るのかもしれない」
「僕にとって理想的なのは、ムジカエテルナのメンバーたちと一緒に修道院にこもって、朝日が昇るのとともに瞑想しリハーサルをする生活。
そこに、僕たちの音楽を聴きたい人たちだけが聴きにくる。
そして3か月に一度ぐらいは外に出て、僕たちのスピリチュアルを街の人に聴いてもらう。そんなコミュニケーション」
「僕たちのミッションは、まずはスコアに書かれている音を再現すること。
でもそれだけではなく、音楽に書かれているスピリットを表現しなければならない。
残念ながら音楽大学の学生たちが学んでいる99パーセントは、『正確に音を出す』ということ。
そして、『こう弾けばこういう感情に聴こえる』というテクニックだ。
けれども、自分自身がスピリチュアルを持っていなければ、音の本当の意味は伝わらない。
それを自分で感じなければならない」
「僕はミュージック・ラヴァーだからね。いい音楽を聴いてきたよ(笑)。
ロックもかなり聴いた。ヨーロッパ、アメリカ、日本のアンダーグラウンドの音楽には素晴らしいものがたくさんあるんだ。そしてワールド・ミュージック。たとえば1960年代のグアテマラの音楽とかね。
僕はそういう新しい表現にとても興味があったんだけど、そんな率直さが現在のクラシック音楽にはちょっと欠けているんじゃないかな。
見せかけだけの偽物になっているような気がする。
プロフェッショナルな音楽家が、毎日毎日同じようなものを再現してお金をもらう。
結婚式のうわべの祝辞みたいに、何の意味も込められていない。
僕にとってはロックやオルタナティヴ・ミュージックのほうが、偉大なシンフォニー・オーケストラの音楽よりもよっぽど楽しい。
ワールド・ミュージックのミュージシャンたちのほうが、アカデミックな音楽家たちよりも、クラシック音楽に対する理解が深いと思うんだ」
そんなあなたがどうしてクラシックの世界にとどまったのかと問われると、
「もちろんクラシックがベスト・ミュージックだからさ」と即答した。
「そんなの、ジャンキー(麻薬中毒者)に、なぜクスリをやめないんだ?と訊くのと一緒だよ(笑)」
そのうえで、現状のお行儀のいいクラシックに警鐘を鳴らすのだ。
「僕は音楽的な家庭で育つことができた。5歳の頃からセックス・ピストルズを聴き、そしてクラシックの教育も受けた。
とてもオープンに音楽を聴き、理解していたんだ。
でも他の子供とは違って、街で聴かれている音楽と先生が教えてくれる音楽が違うということに気がついた。
その両方を理解することが、僕にとってはとても大きかったと思う。
アカデミーに走ってしまう人は、世間の音楽をあまり経験することがない。
音楽が何を伝えたいのかという生の声を見失ってしまっているように思う」
ウィーンフィルハーモニー・2020ニューイヤーコンサート
今年のウイーンフィルニューイヤーコンサートは、アンドリス・ネルソンスがタクトを振りました。
ネルソンスは、今年41才の新鋭指揮者で、昨年末惜しくも病で急逝したマリス・ヤンソンスと同じラトビア出身です。
今回の演奏ですが、彼のシンフォニーコンサートで強く感じられるアグレッシブな輝きをここでも感じ取ることが出来ました!
ウィンナワルツは伝統的なドイツオーストリアの本拠地の古典音楽ですから、独墺系の昔ながらの演奏スタイルで再現される、又は再現しようとすることが多いでしょう。
しかし、このような音楽にも新風を吹き込む演奏が必要なのではないかと自分は感じています。
もちろん、エキセントリックな、小手先だけの手法では上手くいかないのは当然です。
オーケストラと指揮者が入念なリハーサルを経たあと、本番で、
いかに感興に乗れるか、いかに興奮出来るか、いかに狂気を出せるか、特に指揮者は、最後にこの「輝き」「生命力」をプレイヤーから引き出そうとするのではないでしょうか?
多くのリハーサルを積み、最後は奏者の魂を解放させるということではないでしょうか?
もちろん、演奏はこの要素だけで成り立っている訳ではありませんが、この魂の解放を何より大切にした指揮者を思い出します。
ハンス・クナッパーツブッシュ、シャルル・ミュンシュ、レナード・バーンスタイン、カルロス・クライバー・・・そして最近では、ベルリンフィルのシェフに就任したキリル・ペトレンコ。
ネルソンスからも、そのような方向の演奏を聴きたいと願っています!
ブリテン キャロルの祭典
クリスマス・イヴにまさにピッタリの曲を聴いて欲しいと思います!
ベンジャミン・ブリテンの「キャロルの祭典」という、合唱とソロハープの曲です。
自分は、昔、器楽曲に反して、人の声の音楽が好きではありませんでした。今はもちろん、抵抗なく大好きなんですが。
でも、この曲は聴いたとたん、好きになりました!
そして、それまで自分が聴いたいかなる音楽とも異なっていたし、いつも大好きな情熱あふれる音楽でもありませんでした。
日常から遠く離れた、清らかな別世界に連れていってくれる音楽です。
1. 入堂 Procession
2. 主の降誕を歓迎! Wolcum Yole!
3. そのようなバラはない There is no Rose
4a. あの幼児が That yonge child
4b. 子守り歌 Balulalow
5. 四月の露のように As dew in Aprile
6. この赤子が This little Babe - 聖Robert Southwell, 1595
7. 間奏曲 Interlude - ハープ独奏
8. 凍りつく冬の夜に In Freezing Winter Night - 聖Robert Southwell, 1595
9. 春のキャロル Spring Carol
10. 神に感謝 Deo Gracias
11. 退堂 Recession
Youtubeでは紹介したい演奏が見つかりませんでした。
このニコニコ動画も広告が入っていますが最初だけだと思うんです・・・
そして、画面は見ずに音だけ聴いて下さい。(ちょっと音がボケてますが、うるさいのよりはいいと思います)
https://www.nicovideo.jp/watch/sm6956541
それでは、皆様に良いクリスマスでありますように・・・
夏が行ってしまう前に、紹介したい曲
ここ数日、早朝から涼しかったり、雨が降っていたりです。
日の出が遅くなっているのも、はっきりと分かります。
あれほど暑かった今年の夏も、ゆっくりと去っていこうとしています・・・
今朝林にさしかかると、ヒグラシの静かだけど大勢の合唱が聞こえてきました。ヒグラシって夕方だけじゃないんですよね。
そして雨がポツポツと降ったり止んだり。
その中を傘を差したり閉じたりしながら速足で職場に向かいました。
この空気なら確実に快適なんだけど、やっぱりさみしい・・・
自分は、スピードウォーキングの時、人通りがまばらな時間ならYoutube その他を使って音楽を小さい音で聞いています。
イヤフォンは使わず、腰ポケットのスマホから聞こえてくる小さな音を聞きます。
馴染んでいる曲なら、途切れ途切れに聞こえるだけでも音楽を追っていけるんです。
今年の夏が行ってしまう前に、若々しく、とびっきり情熱的なワンシーンを紹介したいと思います。
マーラーの交響曲第1番「巨人」の、第4楽章開始からちょっと過ぎた部分です。
39 ′ 27 ″ からのところです!
長い長い呼吸の盛り上がり!
そして 41 ′ 22 ″ ~ 42 ′ 21 ″ のクライマックス!
さらに、そこから43 ′ 06 ″ まで長い時間をかけてゆっくりとゆっくりと波が引いていく部分!
馴染んだら、目を閉じて音だけに集中して聴いて欲しいんです。
若々しく素晴らしく、いつ聴いてもとても熱い音楽だと感じます!!
・・・ この部分のあとは、劇的な音楽が展開されていきます!
最後に、フィナーレの凄い熱狂をどうぞ!!
53 ′ 00 ″ から聴いて下さい!
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