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戦況がどう動いても、戦闘が終わるまで犠牲者は増え続ける・・・

 ウクライナへの侵攻から既に10日が過ぎ、

国内外のメディアからはさまざまな報道がなされている。

「ロシア軍の侵攻は思ったように進んでいない」

「ロシア軍兵士の士気が下がっている」

「クレムリンの中でプーチン大統領に物を言える人がいない」など、

ロシアについてネガティブに報じるものが多いが、

プーチン大統領としても、一度侵攻に踏み切った以上は弱気の姿勢を見せられなくなっている。

また、兵力を比較してもロシア軍の優勢は明らかであり、

欧米諸国がウクライナ軍への軍事的支援や、欧米からの制裁がさらに強化されても、

侵攻を思いとどまる可能性は低く、侵攻をさらに加速させるかもしれない。

ロシア軍は市民の巻き添えを顧みずに攻勢を強める恐れがある。

 

 実はこれまでも、国際社会において

「経済制裁で戦争は終わらない」ということが多かった。

 

<経済制裁は政治的に使いやすいツールですし、

「制裁をした」と発表することで国民の憂さ晴らしにもなるという効果もあります。

相手の行動を変えるよりも、制裁を与えること自体が目的化しているともいえます>

 

 つまり、我々は、

ロシアからトヨタが撤退したとか、マクドナルドが営業停止をしたとか、ロシアの富豪たちが資産を凍結されたという経済制裁のニュースを見て、

「ざまあみろ!」と胸がスカッとしているが、

それだけで終わってしまっていて、現実の戦争を終わらせることにはそれほど役立っていない恐れがあるということだ。

 

 制裁も一定の効果を持ち得る。

しかし、それはまた、制裁が逆効果となる始まりでもある。

これは、一つには、制裁がある国の一般市民に痛みを与えることになると、

問題の指導者を脅かすというよりは、むしろ、その国の反外国人感情を高まらせかねないからである。

 つまり、経済制裁によって痛みを与えられたロシア国民が、

「プーチンの暴走を止めろ!」となるのではなく、

「西側諸国の嫌がらせに負けるな」という感じで、西側諸国への憎悪をかえって膨らませてしまうのだ。

誰がどう見ても悪いのはプーチンなんだから、世界からどう見られているのかという正しい情報を教えてあげれば、ロシア国民も目覚めるはずだ、と反論をする人もいるだろうが、

この「経済制裁による事態悪化」を誰よりも知っているのが、我々日本人だ。

ロシア国民を追いつめて対立と憎悪をあおるだけかもしれない。

 

 ロシアで反戦ムードが高まっているのは事実だし、プーチンへの不信感・不満も高まっているのも事実なのだろう。

しかし、一方で西側メディアが報道するウクライナの惨状を見て、

「フェイクだ」「NATOの陰謀だ」として、より西側諸国やウクライナに対して憎悪を膨らませている人や、プーチンの信奉者もそれなりにいるのも事実だ。

 ということは、西側諸国の「反ロシア連帯」が強まれば強まるほど、

そのような人々のナショナリズムを刺激して、

「この制裁を解除させるためにも、ウクライナに総力戦を仕掛けて早く勝利をしなくてはいけない」という、事態を悪化させるような世論が醸成される恐れもあるのだ。

 

 経済制裁で国民に痛みを与えれば、彼らが立ち上がって権力者の暴走を止める、というのは、確かに合理的な考え方だ。

が、80年前の日本(太平洋戦争を始めた)を見てもわかるように、

戦争というのは、「正しい情報」が揃っていたとしても、合理的な判断ができない時に起きるものなのだ。

 

 プーチンの暴走を食い止めるために国際社会が連帯・連携すべきであることにはなんの異論もない。

しかし、一方で過去の歴史を学べば、「ロシア国民」を追いつめるようなことをしてもさらなる対立と憎悪をあおるだけで逆効果になってしまう恐れもある。

 

 今我々がやるべきは、

ウクライナの人々を救うことであって、

必要以上にロシアの人々を苦しめることではないのではないか。