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追憶の夜行列車(1)

今晩は学校に宿泊で時間もあったので、ちょっと恥ずかしいんですが、短い文章を書いてみました!

ここに出てくる中学生は、昔の多感なころの自分です・・・

(2)は書けるかなぁ・・・

 

<追憶の夜行列車(1)>

 彼も、もう中学校1年生になっていた。

その年の夏、突然、父親が広島の実家に帰省すると言い出した。

彼も一緒に連れて行くと言う。

彼はもう嬉しくて嬉しくて、帰省当日が待ち遠しくてしかたがなかった。

まずは、大好きな夜行列車に乗れるからである。

帰省前夜は興奮して眠れないほどであった。

当日の夜、鹿児島本線小倉駅に向かうバスの中でさえ、もう全く未経験の特別な旅であるような感覚の中にいた。

父から急行座席指定券、乗車券の2枚を受け取るところから、ワクワクする儀式のようであった。

大きな構えの国鉄の駅舎に着き、長い通路を歩いて階段を昇り降りし、ようやく到着ホームに立てる。

内側からの明かりで照らされ、1年中消灯されることのない時刻表を目で追ってみる。

普通列車、特急寝台列車に混じって、2人が乗る列車「寝台急行日南3号新大阪行き」がはっきりと記されていた。

座席指定券を渡されているのだから、今回寝台車には乗れないとは思っていたのだが、「寝台急行」の表記に、もしかすると寝台車両に乗れるのかもと、かすかな期待を抱いていた。

この列車は、はるか南の日豊本線都城駅をディーゼル機関車DF50に牽引されて発車し、小倉駅でステンレス車体の海底トンネル専用電気機関車EF81に付け替えられるのである。

当然のことながら、鉄道好きの彼はこの機関車付け替え作業の一部始終を見守っていた。

電車と違い、機関車がけん引する列車では、動力源が機関車だけに集中している。

そして、機関車はけた違いに重い車輛である。

そういう訳だから、このマッシブで鉄のかたまりのような車輛が近づいてくる時に発するエネルギー、特に音は、感動して鳥肌が立つような迫力を帯びている! いや、人によっては怖いというかもしれない!

今思えば、だんだんと近づいてくるこの強烈な音のかたまりは、オーケストラがクライマックスに向かっていく時に発して押し寄せてくる音の波にそっくりである!

この地域では珍しい電気式ディーゼル機関車DF50を見送ったあと、彼はわざと寝台車輛のデッキから列車に乗り込むのだった。

一人旅も大好きだった彼にとって、寝台車に乗れることほど嬉しいことはない。

52センチ幅の狭い寝台!

下段は走行音が大きいが揺れが少ない。上段は揺れが大きくてはしごを上らなくてはいけないが、レールの音が小さくて荷物スペースも広い。中段はわずかな窓のすきまからちょっとだけ夜景が見える!

もう一つ、今では考えられないかもしれないが、日中の下段は、上中下段の座席でもあるのだ。

なので、中上段の人が上にあがってくれるまで、下段の人は横になることも出来ないのである!

この3段の寝台スペースは、深夜は通路の明かりが暗くされた中、厚手のカーテンで仕切られた個室に変身するのだ。

あちこちのカーテンの中からは、レール音の伴奏に乗った寝息が静かに聞こえてくる。

中にはいびきをかいてる人もいる。

もちろん、彼が寝台車に乗るときは、眠ったりしない。

この最高に夢のある夜行列車の旅を、1分でも長く味わっていたいのだ・・・

(続く)